ケヴィン・キーティング『韓国で儲ける』(新潮社OH!文庫2000)を読む。
韓国在住の米国人の目を通した多岐にわたる韓国の商慣習についてのコラムである。この手のアジアを紹介する西欧の文献に共通してありがちだが、一方的な視点で韓国を捉えており、当の韓国人が読むと隔靴掻痒たる思いであろう。
月別アーカイブ: 2003年11月
『爆笑問題とウルトラ7』
爆笑問題ほか『爆笑問題とウルトラ7』(新潮文庫2002)を読む。
ほとんど笑いはなく、中身の大半は、立川談志や橋本治、山田洋次等と爆笑問題太田との芸術論である。単なる文学論、映画論ではなく、テレビという出れば出るほど大衆に晒され、自らの芸が枯渇していくシステムの中でしぶとく生き延びていくための芸術のありようを模索している。
『歴史を変えた誤訳』
鳥飼玖美子『歴史を変えた誤訳』(新潮社OH!文庫2001)を読む。
戦後の日米の政治・軍事・経済に関して、日米の委員会の取り決めや条約について誤訳や故意の意訳がなされ、当時の与党自民党に都合が良いように国内で解釈されてきたという事実には開いた口が塞がらない。例えば日米ガイドラインの英語テキストでは
Cooperating as appropriate,they will make preparations necessary for ensuring coordinated responses according to the readiness stage selected by natural agreement.
の部分は著者によると次ぎような訳になる。
「日米両国政府は、適切に協力しつつ、合意によって選択された即応態勢段階に従い、日米間の連繋した対応を確保するために必要な作戦準備を行う」
しかし政府訳は野党や米国追従を批判する保守勢力に配慮してか、焦点を誤摩化した次のような訳になっている。
「日米両国政府は、適切に協力しつつ、合意によって選択された準備段階に従い、整合のとれた対応を確保するために必要な準備を行う」
この他「周辺事態」や「同盟」「指揮権」など様々な日米安保に関する軍事用語が憲法の枠内であるかのごとく意訳されている。しかし訳語によって憲法をないがしろにするとは国民を愚弄している以外何物でもない。
また「オーク」という語は一般に日本で「樫」と訳されているが、それは全くの誤訳であり、正しくは「水楢」雑木であるという指摘は思わず「へえ~」だった。
『英語屋さん』
浦出善文『英語屋さん:ソニー創業者・井深大に仕えた四年半』(集英社新書 2000)を読む。
タイトル通り井深氏の秘書兼通訳として活動した作者の思い出話となっている。『通訳・翻訳ジャーナル』という月刊誌に連載されたエッセイが元になっているためか、要は英語さえ出来れば中身は問われずとも大企業で給料がもらえるという話である。心動く場面はほとんどなかった。しかし井深氏が取り組んでいた0歳児教育に関する引用は面白かった。母子のスキンシップを大切にしたコミュニケーションという昔からある子育ての焼き直しであるが、原始歩行の訓練などは、ホモサピエンスの高度な発達の原点が猿人の二足歩行だったように、人類の発達をなぞるようで興味深い。
不在者投票
今日は衆院選の不在者投票に春日部市役所まで出かけた。別館の会議室の一角を用いて行っていたが、整理券を配るほどの盛況ぶりで投票までに30分ほどの時間を費やした。不在者投票と名はついているものの、実質「毎日が投票日」と評されるこの制度が施行されて間もないが、そろそろ一層の充実を計ってよい時期であろう。特に春日部市は前回の埼玉参院選補選の低投票率の批判を受けたにも関わらず、不在者投票所の案内は小さく、土曜日ではあるが市役所の職員もほとんど出て来ない。相も変わらずルーティンワークな仕事ぶりである。