中学生向けの推薦本を選ぶ機会があったので、参考までにと、講談社青い鳥文庫シリーズの中から一冊、羅貫中作・駒田信二訳『三国志』(講談社青い鳥文庫 1985)を読んだ。
横山光輝作の漫画『三国志』だとイメージがかなり固定されてしまうが、280ページほどの抄訳で省略が多かったため、地図やら国語便覧やらを活用して読み進めた。はたしてこの入り組んだ人間関係が中学生に理解できるのだろうかと思いながら最後まで読んだ。
月別アーカイブ: 2003年5月
関宿城博物館
『環境とつきあう50話』
森住明弘『環境とつきあう50話』(岩波ジュニア新書 1993)を読む。
牛乳パックや合成洗剤、トイレットペーパーなど身近なものを例に環境問題を中学生にも分かりやすく説明した本である。単に環境面への悪影響をかいつまんで解説するだけでなく、その歴史から環境運動、そして具体的な生活指南まで示している点が良い。
環境問題を自分の生活、仕事に関連づけて考えられるようになるには、なにか一つ自分がこだわるものとともに、上流・下流に旅してみることがたいせつだと、私は考えています。牛乳パックでいえば、原料はどこで取れ、だれが、どこで、どのようにつくり、売り、自分の生活や仕事の場まで来るのだろうと、まず上流に思いをはせるのです。つづいて、使用後、だれが回収してくれ、どこで処理され、最後はどうなるのだろうと、下流に思いをはせ、できたらほんとうに旅してみるのです。すると、最上流と最下流は山や海などの自然で、同じ場所であることが見えてきます。下流は見たくない世界,無関心の世界だったのですが、上流でもあるのです。生活や仕事のつけを下流に押しつけると、かならずつけが上流から還ってくることがよくわかります。
読みながら何となく「消費の疎外化」というキーワードが思い浮かんだ。我々は冷蔵庫でも洗濯機でも商品を消費し、使用する際、その全体像がつかめずに、部分的にしか消費に関われない。そして消費はそのまま浪費になってしまう。
『おたく少女の経済学』
荷宮和子『おたく少女の経済学:コミックマーケットに群がる少女達』(廣済堂出版 1995)を読む。
タイトルにもある通りコミケに集まる若者を社会学的に分析したものだ。例えば、やおい・ジュネ系漫画の増加の背景には、「真摯な恋愛の表現としてのセックス」、「セックスそのものとしてのセックス」を味わうのではなく、笑うためのセックスシーンを求めている女性の増加があると作者は指摘する。従来の男性主体女性客体ののエロ漫画とは一線を画し、「女という被害者意識」からの解放と「男という完全他者の苦しみ」を娯楽として味わえるポストを女性が獲得できるようになった社会状況を背景としている。消費文化の象徴といったパロディ漫画の隆盛に、消費に飽き足らずに創作意識を発揮せんとするおたくのありようを述べる作者の視点は暖かい。