浅田次郎の短編集『鉄道員』(集英社 1997)を近所のファミレスで読んだ。
途中人目もはばからず涙ぐみそうになった。数年前、高倉健と広末涼子主演の映画の宣伝をテレビで見た際は長編ドラマのようなイメージがあったが、原作は単行本で40ページほどの短編である。かいつまんで言えば、廃線間近の路線の駅長の家族と国鉄の仕事に板挟みになった過去の回想シーンを交えた物語に過ぎないのだが、一つ一つの台詞が大変重いので紙幅以上のドラマが凝縮されて展開される。台詞の少なさという点で、高倉健を駅長役にしたのは妙案であろう。それにしても小説の方は、ちょうど家族と仕事というモチーフといい、北海道という舞台といい、短編ならではのはしょった展開の仕方といい、有島武郎の『小さき者へ』とそっくりである。しかし『鉄道員』は国労闘争団の悲哀とも重なってくるのでより感動が深い。
『鉄道員』
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