小池真理子『恋』(早川書房 1995)を読む。
「確かこの描写、数年前に読んだよなあ」とずっと考えながら読み進めていった。学生時代にバイト先の同僚から勧められて小池真理子を数冊読んだことがあるのだ。1970年前後のセクトのアジ姿の描写がうまく特徴を捉えていたからマニア的に読んでいたのだ。内容は1972年の浅間山荘事件と同じ軽井沢を舞台とする恋愛犯罪サスペンスである。明大生である主人公矢野布美子の脳裏に去来する、学生セクトの内ゲバに対する冷めた現実意識と耽美的恋愛に憧れる少女趣味の相克がテンポ良く描かれていた。全共闘運動以降の学生の心に生じた喪失感、失望感の裏返しとしての、虚無的な官能ロマンスがテーマであったと言えるだろう。ちょうど100年程前に田山花袋や島崎藤村といった自然主義文学から谷崎や永井などの耽美派が生まれてきたように。
先日深夜に大宮にあるドンキホーテへ出掛けた。通路のいたるところに商品が溢れていたが、一部の目玉商品以外さして安いというわけではない。必要のないアクセサリーや生活用品になんとか必要性を見出そうとする過程が楽しいのであろう。また入り口の前にはたこ焼きとチョコバナナが売っており、店内はタオル地のスウェットやジャージ姿の若者が目立った。近所で開店反対運動が起きるのも納得できる光景であった。