矢口史靖監督『スゥイングガールズ』(東宝 2004)を新しくさいたま新都心に出来たシネコンへ観に行った。
展開といい、のりといい、まんま『ウォーターボーイズ』の女子高生版だが、楽しく見ることが出来た。ちょうど高校生や専門学校生が描くような漫画チックなドタバタ劇なのだが、出演者のべたな演技がかえって新鮮でさわやかな作品になっている。
ちょうど田舎を唄うフォークソングが都会の人に支持されるように、こうした高校生の青春ドラマは当の高校生や大学生よりも、精神的にも肉体的にも青春時代の終わりがやってきた30代の大人が観て感動する作品なのであろう。
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『ヴィレッジ』
『スチームボーイ』
大友克洋監督アニメ『スチームボーイ』(2004 東宝)を観に行った。
産業革命勃興期にいち早く工業化を果たし、「世界の工場」の座に着いたの19世紀のイギリス、ロンドンが舞台である。スティーブンソンによる蒸気機関車の発明によりアジア・アフリカの植民地化が加速化し、「科学」やら「国家」「文明」なるものに振り回され、第一次世界大戦によって破壊されていくヨーロッパの雰囲気をうまくどたばた調に描いている。国家を独占資本企業が支配していく帝国主義の発達の萌芽をロンドン万国博覧会に織り交ぜながら、ロバート・オーウェンが指摘したような工場労働者の過酷な労働環境の改善を訴える人物や、二枚舌外交を演じたロスチャイルド家のマーク・サイクスに似たような人物までも出てきて、時代考証はびっくりするくらい丁寧に出来ている。しかし芸術のような絵、壮大な音楽に比して、人形のような登場人物が舞台設定に対してあまりに緊迫感のないセリフを口にする。また物語世界の中では数週間ちかくの時間が経っているはずなのに、人物像の描き込みが少ないため、その時間の流れが感じられず、薄っぺらな内容になってしまっている。また宮崎駿の『天空の城ラピュタ』を彷彿させるようなシーンやセリフが多かったのも興ざめだ。部分部分のアクションシーンなどはアニメとCGの合成により迫力満点なのに、完璧を求めすぎたのか、全体の流れが淀んでしまったような内容になってしまったのは残念だ。
『マッハ!!!!!!!!』
ブラッチャヤー・ビンゲーオ監督映画『マッハ!!!!!!!!』(2003 タイ)を観に行った。
ちょうど初期の『蛇拳』や『木人拳』のジャッキーチェンのような手に汗握る肉体を酷使するアクション映画である。盗まれた仏像の頭部分を取り戻すという至って単純な話なのであるが、スタントマンやCGを使わず全て主役の俳優が演じているので、観ていて気持ちいい。最後のクレジットの流れるところでNG場面も出てきたのだが、苦労の一端がよく分かった。
□ 映画『マッハ!!!!!!!!』公式サイト □
夏休みということでめずらしくレンタルビデオ屋から映画を二本借りてきた。『ニューシネマパラダイス』と『チル』という作品である。『ニューシネマ〜』の方は定評のある作品であり、映画館好きな私としては共感出来る部分も多かった。『チル』というアメリカで2001年に公開された映画であるが、私が今までに観た映画の中でも最低の部類に入る作品であった。子どもだましな鹿のお化けが人間をとっちめるというホラーともサスペンスとも言いがたい内容不明な映画であった。
『ブラザーフッド』
カン・ジェギュ監督『ブラザーフッド』(2004 韓国)を観に行った。
兄弟愛をメインにした映画かと思ったが、米ソ中の大国の思惑に翻弄される朝鮮戦争の悲哀を描いた戦争映画であった。無二の兄弟である兄と弟の間に「38度線」が作られてしまうという朝鮮韓国民族のつらい歴史が顔を覗かせる。共産主義者だから殺さなければならないというイデオロギーが結局は米国によって作られたまやかしであったということが激しい銃撃戦の中で描かれる。涙が流れるような感動はなかったが、よい映画であった。
翻って日本にはそうした戦争映画は数少ない。広島や沖縄での被爆体験を描いたドラマや映画は数多くあるが、韓国併合、南方進出や南京大虐殺に関わった日本兵の葛藤を扱った映画を私は寡聞にして知らない。あれば見てみたいものである。





