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『時雨の記』

中里恒子『時雨の記』(文春文庫 1981)を読む。
作者の中里さんは、日本初の女性で芥川賞を受賞しており、横光利一や川端康成とも親交のあったとのことで、国語便覧で紹介されていそうな作家である。

1977年に刊行された本の文庫化である。50を過ぎた会社経営の既婚男性と夫を亡くし片田舎でひっそりと寡婦生活を続けてきた40代女性の恋愛小説である。細君とのいざこざや会社経営、病気の悪化など、およそ若者同士の溌剌とした恋愛にそぐわない話が続く。それでも銀閣慈照寺のような質素なムードの中に、信頼や思いやりといった感情を感じることができた。
登場人物の男性をして次のようなセリフがある。印象に残る一節であった。

恋は若いときの情熱だけであろうか。出會の問題であろうか。俺の心をかきたてる情熱は、にべもなく言えば、男の本能であろう。若い時は、本能のほかに、野望も、征服感も、雑多な不純物もまざっていた。尋常に暮して、妻子にも不自由させず、仕事も一應やるところまでやった男の、その上の、また別の世界で、恋しい女と、一日でも思いをとげたいという慾望は、過去のことごとくを捨てる覚悟の上の、捨身ではなかろうか。

『疋田智の自転車生活スターティングBOOK』

疋田智『疋田智の自転車生活スターティングBOOK:とりあえずワタシはこうして走り出した』(ロコモーションパブリッシング 2006)を読む。
自転車の購入からグッズの揃え方、イベントや簡単な整備など、スポーツ自転車に乗り出すまでの入門書となっている。また自転車を楽しむ中年男性のエピソードも紹介されている。GIANTが協力しているのか、やたらとGIANT推しであったが、著者の体験に基づく内容で、読んでいて飽きなかった。

『自転車力検定』

金子直樹『自転車力検定』(ロコモーションパブリッシング 2008)を読む。
読んだことがあるようなと思っていたが、案の定8年ほど前に一読していた。
前に読んだ際にも留意していたが、松下幸之助氏に関するエピソードが興味深かった。大阪の自転車店で5年間、丁稚奉公として勤め上げ、馴染みのの客のためにタバコを買い置きしておくなど、機転あふれる商才を発揮していたという。その後、大阪電燈で働き、独立して松下幸之助氏の代名詞ともなっている二股ソケットを発明して事業を軌道に乗せ、1923年(大正12年)に従来品より電池の持ちのいい自転車用ライトを発表している。従来品は2、3時間しか点灯せず、故障の多いものだったが、彼の発明したライトは4、50時間も点灯する故障の少ないシンプルな設計の砲弾型ライトであった。

豆知識ばかりであったが、この自転車用ライトの項は、自転車の歴史が垣間見えて面白かった。

『自転車でカラダとココロのシェイプアップ』

絹代『自転車でカラダとココロのシェイプアップ』(枻出版社 2008)を読む。
東大農学部出身の著者が、自転車だけでなく栄養学や体の消化・吸収・代謝などを分かりやすく解説している。自転車自体の紹介はほとんどなく、自転車を活用して美しく、健康に痩せるダイエットの本となっている。ジュースやバター、クリームなどのエンプティカロリーは避け、バナナやアボガド、パイナップルなどのカリウムやクエン酸を含んだフルーツや、トマト、オクラ、きのこ類などのビタミンが豊富な野菜を取ることをお勧めしている。また、ちょっと軽いかなと思うくらいの有酸素運動を継続することで、代謝能力を上げ、遅筋を付けることで、脂肪が溜まりにくい体にすることが一番の近道だと説く。食事を制限すると筋肉が落ち、余計に脂肪が付きやすい体になるので注意とも説く。

『ロード買うなら業界一の自転車バカに訊け!』

菊池武洋『ロード買うなら業界一の自転車バカに訊け!』(小学館 2010)を読む。
著者は1000台を超える自転車に乗り、雑誌にロードバイクのインプレッションを書いている自転車ジャーナリストである。

ビアンキ・クロモリ・カンパ・チューブラー以外を否定するエンゾ早川さんと異なり、それぞれのメーカーに長所や個性があり、正解はそれぞれだという立場である。カーボン、アルミ、クロモリと素材は色々だが、工法や大きさで乗り味は大きく変わるので、一概決めつけてはいけない。また、チューブラーは管理が面倒なので、手間が要らず種類の豊富なクリンチャーが良い。また、イタズラに社外品に走ることなく、トータルのバランスを考えると純正品が良い。