読書」カテゴリーアーカイブ

『新聞記者』

望月衣塑子『新聞記者』(角川新書 2017)を読む。
東京新聞社会部記者の著者が,新聞記者の仕事や菅官房長官とのやり取りの舞台裏などを語る。
警察や永田町,記者クラブなど「大人の空気」が支配する場において,敢えて空気を読まない選択をする望月さんの強さを感じた。
日本社会のあらゆる職場や団体,会合,学校などで,「あえて流れに棹さすのはねえ」「なあなあに済ませよう」「まあ,いいか」「言っても仕方ないし」といったムードが蔓延している。でも,発言しないということは責任を逃れるということであり,引いては回り回って自分を苦しめることである。
望月さんを見習い,「えっ」「ちょっと待てよ」という自らの疑問は,他人にとやかく言われようと大切にしていきたい。

思い出せば,私も望月さんと同じ頃に東京新聞を受験していたのだ。全く勉強していなかったので,全く手応えのないまま一次の筆記で落ちたが,もしかしたら望月さんと同僚になっていたかもしれないと思うと,勝手に親近感を感じてしまう。フロイトの言う同一視か。

『北京・庶民生活の中で』

折笠俊之『北京・庶民生活の中で:中年留学生の生活探検』(鳥影社 2002)をパラパラと読む。
一個人として北京に留学した経験が事細やかに記される。家の水道トラブルやクーラー設置のゴタゴタなど,あまりに細を穿つ内容ばかりだったので,さらっと読み流した。自費出版ならではの視点は良いのだが,読む進むのは辛い。

『原発大崩壊!』

武田邦彦『原発大崩壊!:第2のフクシマは日本中にある』(ベスト新書 2011)を読む。
電力会社や原子力安全・保安院は原子炉の「安全」しか見ておらず,冷却のための電力や周辺住民の避難体制まで見越した安全を見ていない事実を積み上げていく。御用学者によるデータの「捏造」によって作られた安全神話に対して,当たり前の疑問をぶつけていくことが大事だと述べる。

私も原子力安全委員会に所属しているときに痛感しましたが,官僚というのは「わざと」難解な言い回しをして,責任の所在や本質をわからなくさせることに長けています。また,(中略)「御用学者」というのは,もっともらしくウソをつくプロです。素人が真正面から向き合ったところで,丸め込まれるのがオチでしょう。だから,自分たちのわかる範囲の議論をすべきなのです。
「原発が壊れたら,放射性物質は飛び散りますか?」
「飛び散る場合は,私たちは被ばくするのですか?」
このようなシンプルな問いかけを,イエスかノーでしか答えられないように追いつめていく。難しい技術的な話は御法度です。

ただし,後半は地球温暖化の確定されたデータは存在せず,中世代はもっと暑いなかで恐竜は元気に動き回っていたではないかと疑問を呈し,「安全な原発」を推進し,再生可能エネルギーは自然を破壊するものであり期待すべきではないと熱弁する。「あなたこそ御用学者ではないのか」と,思わずツッコミを入れてしまった。

『ハローバイバイ関暁夫の都市伝説』

関暁夫『ハローバイバイ関暁夫の都市伝説:信じるか信じないかはあなた次第』(竹書房 2006)を読む。
アポロ11号の月面着陸疑惑や徳川埋蔵金などの定番の都市伝説だけでなく,いかにも創作っぽい陳腐な話まで列挙されており,あまりワクワクしなかった。

最後に,アメリカが北朝鮮の核開発をあえて見過ごしているのは,中国を封じ込めるために北朝鮮を攻撃するチャンスを伺っているという,至極真っ当な国際関係論が紹介される。なんじゃこりゃと思ったのだが,それ自体がまさに都市伝説ではないか。

日本は北朝鮮と,その背後にある中国との戦争に巻き込まれていくでしょう。

これを聞いて「そんなおおげさな」と思う読者も多いと思います。でも悲しいかな,そうなりかねないのです。では,なぜ戦争になっていくのか?
それは,後ろでその絵を描いている国があるからです。その国とはズバリ,アメリカです。アメリカは大国・中国を牽制しておきたい。そのためには北朝鮮を抑えておく必要があります。
では北朝鮮と戦う時,基地はどこになると思いますか? アメリカ本土からいちいち戦闘機を飛ばす? そんなワケないですよね。ハワイでも遠い。その時の拠点は,もちろん日本。
横田,横須賀,沖縄の基地から北朝鮮に向けて爆撃機が飛び立つことになるのです。

しかし,日本ほど戦争に対する抵抗がある国は世界にはありません。突然そんなことが始まれば,マスコミ,国民こぞって大反対運動が起きるでしょう。日本にはまだそういうムードがあります。でも,北朝鮮が核実験をしているとなれば反応も変わってきます。
それに相手は日本人を拉致した国です。アメリカで横田めぐみさんのドキュメント映画が作られ,公開されているのをご存知ですか? この映画も,ブッシュ大統領が横田さん夫妻に会ったのも,全て日本の世論作りのためでしょう。
実際,アメリカでは横田夫妻とブッシュ大統領が面会したことはほとんど報じられていません。あれは日本向けのアピールだったのです。
大統領と両親が面会したことすら報じられていない国で,めぐみさんの映画が作られ,公開されるのは,どうもおかしな話です。他の意図があるとしか考えられません。

北朝鮮の問題は,メディアを使って国民をゆっくりとマインドコントロールするのにうまく使われているのかもしれません。
確かに北朝鮮がやっている事はメチャクチャです。しかし,日本を拠点として戦うために,アメリカが関与していると考えられるのです。
そもそも,北朝鮮が核開発・実験をすることが出来たのは,韓国から流れた資金のおかげだという話があります。
盧武鉉大統領の対北朝鮮の宥和政策(太陽政策)がそれを加速しました。しかもその資金の流れを,アメリカもわかって黙認していた。
わざと流させていたというんです。なぜなのか? それは北朝鮮に核を開発させ,攻撃する口実を作るためです。
加えて,日本の世論をアメリカに都合のいいように変えるためです。そのために何年も前から着々と”仕込み”をしていたワケです。

アメリカがここまでやっているというのは,どんどん力をつけている中国を封じ込めるためです。北朝鮮と日本にアメリカの拠点があれば,中国も下手なことはできない。早くから中国を仮想敵としていたアメリカは,じわじわと包囲網を作っているのです。だから北朝鮮が核実験を行ったことは,アメリカに好都合でした。
いや,むしろ喜んでいたのかもしれません。(後略)

この都市伝説が本当だとしたら,先日の安倍総理がノーベル平和賞に推薦するなどのトランプ大統領礼賛も頷ける話である。

『坊っちゃん殺人事件』

内田康夫『坊っちゃん殺人事件』(幻冬舎文庫 2010)を大体読む。
1992年に刊行された本の文庫化である。「つまらない」の一言に尽きる。筆者自身のあとがきでもそのつまらなさを説明している。読者はマンネリを楽しむつもりで手にとっているのに,その期待が「作者の身勝手」な試みによってものの見事に裏切られる。作者は『坊っちゃん』を読んだことがある読者には面白く読んでもらえると推定するが,『坊っちゃん』を読んだことのある諸氏にとっても不快感しか残らない作品であった。

本書『坊っちゃん殺人事件』は僕の作品の中でも特筆すべき異色作となるでしょう。お読みになって分かるとおり,この小説は主人公・浅見光彦のモノローグの形で書かれています。多少なりとも深読みの読者なら,この文体とどこかで出会った記憶があるような印象を持ったのではないでしょうか。
まさにその直観は正しいのであって,『坊っちゃん殺人事件』は夏目漱石の『坊っちゃん』野,いわば「本歌取り」なのです。そのことを踏まえて読んでいただくと,この作品の面白さが一入増すはず――と思うのは,作者の身勝手というものでしょうか。