地理」カテゴリーアーカイブ

「世界遺産条約50年」

本日の東京新聞夕刊より。
文系私大の入試で地理を使う人は、世界遺産についても押さえておきたい。記事を一読してほしい。なお、共通テストでも世界遺産そのものを問われることはないが、世界遺産に絡めて観光や気候、地形などの出題が増えている。日本の遺産25件はチェックしておこう。

「氷河解け…半世紀ぶりに砂漠に湖が出現」

本日の東京新聞朝刊に、チベット高原の氷河が解けて、チベットから流れ出す河川の流量に大きな変化が生じているとのこと。

チベット高原は、約2,000万年前にユーラシアプレートにインド大陸がぶつかってできた、世界で最も若い褶曲山脈である。日本の面積の6倍近くの広さがあり、平均海抜は4000メートルを優に超える。南縁は平均海抜6000メートル前後となる、中国やインド、パキスタンの国境未確定地域にほど近いカラコルム山脈や、中国とネパールの国境となっているヒマラヤ山脈となっている。インド大陸はユーラシアプレートとぶつかった後も動きを止めず、大陸の間にあった深海の底を9000メートル近く持ち上げたことになる。ヒマラヤ山脈は今でも、年間10mmという驚異的なスピードで成長を続けている。

また、チベット高原は、高原に蓄えられた万年雪や氷河が徐々に解け出すことによって、中国を流れる黄河や長江、東南アジアを流れるメコン川、インドを流れるガンジス川、ミャンマーを流れるエーヤワディー川、パキスタンを流れるインダス川の源流ともなっている。特にパキスタンは乾燥地帯であり、外来河川となるインダス川の豊富な水で古代文明を築いてきた。パキスタンはインダス川の水で米も小麦も生産することができているので、現在人口2億2000万人いるにも関わらず、食料自給率が100%を超えている。

しかし、温暖化によってチベット高原の氷河が一気に融解してしまった場合、大規模な洪水を引き起こすだけでなく、その後の水の慢性的な供給不足に陥ってしまう。稲作にとっては大ダメージである。そうなると、パキスタンだけでなく、人口14億人の中国、インドシナ半島のラオス、タイ、ベトナム、カンボジア、数年後には人口世界第1位となるインドの農業も壊滅である。

地球温暖化というと、南極大陸の氷河が解けて、海面が上昇し、ツバルやキリバス、モルディブなどの環礁の島々が海に沈んでしまうというのは中学校でも学習するところである。しかし、山岳氷河の融解は、地球の人口の半数をしめる5つの河川の沿岸国を死に追いやる。こうしたチベとを中心においた水問題にも注目していきたい。

ちなみに氷は「溶ける」ものだと思っていたが、新聞記事では「解ける」であった。
ネットで調べてみたところ、自然現象で暖かくて氷が自然にとけ出して水になってしまうような場合は「解ける」を用い、人為的行為でお湯やバーナーなどで急速に氷をとかすような場合は「溶かす」を用いる。つまり、「解く」は自動詞として、「溶く」は他動詞として用いるという決まりがあるとのこと。

「エジプト オリーブ不作 冬場の気温上昇原因か」

本日の東京新聞朝刊に、地中海周辺の気候が変動し、農業に大きな影響を与えているとの記事が掲載されていた。地中海周辺は、大陸西側の中緯度に独特の気候地帯に位置し、夏は高温で乾燥し、冬に降水量が多い湿潤気候となる。そのため、夏は皮の厚いオリーブやレモン、オレンジなどが栽培されている。また、トマトやブドウなど乾燥に強い作物も有名である。一方冬は降水量が多いので、11月に種を蒔き、6月くらいに収穫される冬小麦が栽培されている。

この地中海式農業の公式が各地で崩れているという。地理教師泣かせの記事である。オリーブもブドウも小麦も低調とあっては、来年から授業の説明を変えなくてはならない。フランスなど夏場に多雨となるのであれば、小麦の輸出国から米の生産国に転換する日も近いのか?

「気候変動が起こした干魃 生命の危機直面」

本日の東京新聞朝刊から。
マダガスカルで危機的な旱魃が続いているという。マダガスカル島はグリーンランド島、ニューギニア島、ボルネオ島に次ぎ、世界第4位の大きさで、日本の面積の1.5倍で587,041平方キロメートルとなっている。

マダガスカルは南回帰線が国土のちょうど真ん中を通っている国であり、東部の沿岸部は南東貿易風の影響を受け、湿った風が一年中吹き込むため、熱帯雨林気候となっている。またアフリカ大陸に面した西側は、日本と同様に季節風の影響を受ける。冬は高圧帯のアフリカ大陸から低圧帯のインド洋に向かって風が吹く。そのため5月から10月(南半球の冬)までは乾季となっている。

では、湿った風が吹けば雨が降るのかというと、そう単純ではない。

「巨大経済圏 RCEP発効」

本日の東京新聞朝刊記事に、2022年1月1日付で発効したRCEP(アールセップ)の概要が掲載されていた。
「地域的な経済連携協定」と訳され、ASEANに日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国を加えた東・東南アジアの経済連携協定(EPA)である。EPAとはEconomic Partnership Agreementの略称であり、特定の国や地域同士で貿易や投資を促進するため、以下の内容を約束する条約のことである。

  • ①「輸出入にかかる関税」を撤廃・削減する。
  • ②「サービス業を行う際の規制」を緩和・撤廃する。
  • ③「投資環境の整備」を行う。
  • ④ビジネス環境の整備を協議する

RCEPは日本の命運を左右するといっても良い協定で、20年近くかけてシンガポールやマレーシア、タイなどとEPA交渉を重ねてきた結果である。日本の稲作は守りつつ、工業製品の輸出入や観光、投資環境は規制や関税を取っ払うという内容となっている。

南シナ海を中心とした国々で構成されており、政治的には衝突もあり得るであろうが、経済的な友好関係は今後とも維持したい。また2020年の貿易統計によると、日本の輸入相手国で台湾が4位となっている。台湾は自転車大国で完成車から小さいパーツまで生産している国でもある。RCEPでの経済活動に官民一体で取り組みつつ、台湾との関係についてもこれまで以上に絆を深めていきたい。