『テロリストのパラソル』

現在の東京での生活において、花粉症はすっかり季語になってしまった。これからさらにひどくなるのかと思うと憂鬱だ。恥ずかしながら昨日からずっとどこへもでかけず本ばかり読んでいる。「晴耕雨読」ならぬ、「晴耕花粉読」になっている。別に農業を生業にしてはいないが…

直木賞受賞作である藤原伊織『テロリストのパラソル』(講談社)を読む。
先月新宿中央公園で起きた爆発事件との類似が指摘された作品だ。東大全共闘当時の友人関係のもつれが事件の底流を流れていたというものだ。1971年頃の全共闘ブームの終焉と1990年代のバブル経済後の社会がうまく結びつけられていて最後まで読者を飽きさせない工夫がなされている。
しかし作者自身が1948年生まれの東大仏文科卒ということだが、69年当時対する甘酸っぱい郷愁に留まってしまって、単なる見せ場の多い推理小説に終わってしまっているのが残念だ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください