武田邦彦『リサイクル幻想』(文春新書 2000)を読む。
著者は芝浦工業大学で資源材料工学を専攻している教授で『「リサイクル」してはいけない」などの過激なタイトルの著書もある。本書では「家電リサイクル法」の施行など日本でも近年リサイクル意識が高まっているが、実際問題としてリサイクルに係るコストとエネルギーは莫大なものであり、リサイクルをすればするほど、環境に大きなダメージを与えるということを材料工学の観点から指摘している。
社会は現実感を失っています。「そのまま燃やすより、少しでも利用できれば利用した方がよい」という話が、いつの間にか「石炭を使うくらいなら、多少高くついても捨てるプラスチックを使うべきだ」に変化し、さらには「廃棄物貯蔵所が満杯になるのだから、ゴミをなくす方法なら何をやってもよい」という考えに変っていくのです。このように循環型社会の問題点の系統的な整理が難しいのは、さまざまな主張に一見納得できそうな「部分的正当性」があるからですが、最終的にそれらの主張は、環境をいよいよ汚すことになる結論を出してしまうのです。
著者は上記のように、材料や資源の生成から廃棄までトータルに分析することなく、科学的な省察を無視した部分的な感情論に依拠してしまいがちな日本人の思考様式そのものに疑問を投げかけている。そして環境問題に際する第一歩として、「あなたは最近、真夏に暖房をつけていますか?」と聞かれて、すぐその意味が分かり「つけています」と答えられるような包括的な「視野」を養うことを提言する。日本は「第二次世界大戦という大きな犠牲を払って軍備も最小限になっている」という頓珍漢な文章もかいま見られるが、環境コストを考えることもなく、新聞紙のリサイクルに努めていた私自信のありようがその批判の矛先であるのは間違いない。