小長谷正明『脳と神経内科』(岩波新書 1996)を読む。
神経内科医である著者が扱った癲癇(テンカン)などの神経系の病例の紹介が続く。一口に神経の病気といっても、外傷による脳内腫瘍が引き起こす痺れや痙攣(ケイレン)に始まり、神経細胞の異常による癲癇(テンカン)や、ウイルスが原因の狂犬病やクロイツフェルト・ヤコブ病、ホルモンバランスの異常によるクッシング症候群、その他脳梗塞や、アルツハイマー病、そしてスモンなどの薬物による感染など、その原因と対策は多種多様である。また中には「自律神経失調症」のように、軽いめまいとか、何となくのぼせた感じがするとか、そこはかとないイライラなど病名をつけようもない症状に対して、保険制度の穴を突っつくような診断までしなくてはならない。機械的な診療では患者の病因を正しく看ることは出来ないし、かといって献身的でありすぎても適切な治療が出来ないという大変な職業であることは十二分に伝わってきた。
『脳と神経内科』
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