共立女子大文芸学部教授鹿島茂『成功する読書日記』(文藝春秋 2002)を読む。
大学でフランス文学について教鞭を取る著者が、雑誌に掲載された自らの読書日記をまとめた本である。フランス文学から思想、歴史、戦争と、とにかくそのカバーするジャンルは広い。一日数冊というべらぼうな「量」で活字の山を制覇している。学生時代に読んだ中野重治の獄中日記を思い出した。
まことに博覧強記な著者であるが、読者に勧める読書のあり方はいたってシンプルだ。とにかく、読書の「量」をこなすこと、そして簡単でいいからその本と遭遇した時の情報を残すことの2点である。まずは自分が興味を持っているジャンルの本を徹底して読み続けること。そして、いつ、どの書店で、どのような形でその本と出会ったのか、本そのものとの出会い情報を残しておくことである。本との出会いを自分の日常生活体験の中に位置づけることで、それまでの読書の軌跡が意識に上り、次の読書意欲が換気されるという。また、本を読み終えたら、その本のエッセンスとなるような箇所の「引用」と、物語や思想を自分の言葉で言い換えて「要約」を習慣づけて行うことで、文章理解能力の基礎が固められると述べる。
確かに他者性のない文章を書き連ねている私にとって耳が痛い話しである。これを契機に少し要約を練習していけたらと思う。
読書日記や映画日記を続けていると、いつしか、コレクションが「開かれる」という現象が起こってきます。それまでは、一つにジャンルに集中していたものが、あるときそこに夾雑物がまじりこんできて、その夾雑物が次のジャンルを導くのです。冒険小説ばかり読んでいたとき、たまたまSF小説を一つ読んで、日記に記載する。そして、それがおもしろかったりすると、今度はSFというジャンルにコレクションが「開かれて」くるのです。