『キヤノン特許部隊』

丸島儀一『キヤノン特許部隊』(光文社新書 2002)を読む。
戦前カメラ専業メーカーであったキヤノンが、特許権をうまく活用することで、複写機やプリンターを世界戦略製品に育てあげた経緯が語られる。そのキヤノンの特許を一手に担当し、日本最強の特許マンとも称された著者が、企業の特許戦略に止まらず、大学改革や司法改革にまで踏み込んで、「国益」として特許のあり方を語る。
特許というと、自社の優れた技術を保護したり、また、独占的な市場を形成や特許技術の商品化など、白黒はっきりしたものだと思っていた。しかし、一つの製品の中にも複数の企業の多数の特許が入り込む現在では、同業の他企業とクロスライセンス(相互実施権)を結ぶケースが多い。そこで他社に譲りたくない自社の特許は保護しつつ、他社の欲しい特許をなるべく安く手に入れる交渉テクニックが求められる。そうした将棋やチェスのような特許の攻防戦略を仕掛けていくところにこそ、特許担当の醍醐味があると著者は語る。

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