『建築家がつくる理想のマンション』

泉幸甫『建築家がつくる理想のマンション』(講談社+α新書 2002)を読む。
世界の都市を参考に、マンションの理想を追求する著者が、氏が手がけた3つのアパートを例に、人間にとって住みよい空間づくりを分かりやすく解説する。著者は埼玉県にある東野高校の校舎建設を手がけたクリストファー・アレグザンダーの影響を受け、生活する人間の視点や動線をも意識した建築を数多く手がけている。
著者はドアの内側の私的な空間とも、全く外部の人が往来する公の空間とも異なる、マンションの住民同士が気軽に触れ合えるような中間的な空間こそが、人間にとって高度の居心地を生むと述べる。具体的に言うと、中庭や縁側などの気軽に声を掛けやすいスペースや、格子があって中がよく見えない小さな窓、すだれ越しに見える部屋、奥まっていて外からは見えない部屋などプライバシーを保ちながら、と同時に気配を感じられるような半分開かれ、あるいは閉じた空間が多様にあることが大切なのだ。彼の手がけた3つのアパートともそうした哲学に貫かれており、建てられてから10年経った現在でも空室待ちの状況が続いているということだ。
たしかに、現在の住宅の空間は内と外の二種類しかなく、近隣との付き合いでも、外では声を掛けにくいし、内に踏み込む訳にもいかず、お互いの遠慮が立ってしまう。そうした空間のあり様が人間の心理や生活に大きな影響を及ぼしているという指摘は興味深い。
私自身が、現在引っ越しを考えており、子ども成長過程を思い浮かべながら読んでいった。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください