『不夜城』

馳星周『不夜城』(角川書店 1996)を読む。
中国系マフィアや台湾ヤクザが暗躍する、24時間眠らない街—不夜城—の歌舞伎町を舞台にした作品である。台湾人と日本人の半々である主人公健一が、信義、友情、愛情、裏切りそして殺人の交錯するヤクザ世界を渡り歩く中で、自分のアイデンティティや人間不信を問い詰めていく。ド派手な銃撃戦や心理的駆け引き、またエンターテイメントに付きものな濡れ場シーンなどスリリングな展開で、時間も忘れ一気に読んでしまった。最後はお涙頂戴的な悲しい結末を迎えるが、その中に純愛を必死に求めようとする主人公の姿も描かれており、単純に面白いと広言できる作品である。先日読んだ「夜光虫」よりも話がシンプルな分だけスピード感があるように感じる。

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