森永卓郎『年収300万円時代を生き抜く経済学』(光文社 2003)を読む。
著者の森永氏はテレビ朝日などの番組によく出演するが、コメントする姿を画面でちらっと見る限りでは、オタクを礼賛し、にやにや笑顔を浮かべる単なるオジサンだと思っていた。また、本書もタイトルから想像するに年収の低い世帯に贈る節約術だと勘違いしていた。しかし、書かれた文章を読んでみて著者の経済分析の鋭さと論説の分かりやすさに驚いた。
執筆当時の〈小泉−竹中〉構造改革は、まず自由競争、市場主義経済のグローバルスタンダードの国際社会に参画していくために、デフレ構造の中で、徹底した不良債権処理や規制緩和、法人税・相続税の減税を実施した。その結果、海外の投資機関や一部の大企業などの一部の勝ち組が生じる一方で、日本国民の9割が年収300万円以下になってしまう経済構造に陥ってしまう過程を懇切に説く。
日本の中小企業を守りながら金融を再生させる方法は、土地担保主義の金融システムを復活させる以外に方法はないのであり、それは裏返して言うと、デフレが終結して土地担保主義の金融システムが機能回復をした瞬間に日本経済は劇的な回復をするということだ。それも半端でない勢いで回復していくこ とになるだろう。