『野火』

帰りの飛行機の中で、大岡昇平『野火』(新潮文庫 1994)を読む。
戦争末期の日本軍が劣勢に立たされたフィリピン山中をさ迷う敗残兵の田村一等兵が、フィリピン女性を撃ち殺したり、人肉を食べたりするといった記述を通して、戦争の狂気を描く。

愚劣な作戦の犠牲となって、一方的な米軍の烽火の前を、虫けらのように逃げ惑う同胞の姿が、私にはこの上なく滑稽に映った。彼らは殺される瞬間にも、誰かが自分の殺人者であるかを知らないのである。

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