陳舜臣『敦煌の旅』(平凡社,1976)をパラパラと読む。
前半は甘粛省の酒泉から敦煌に向かうまでの旅日記だったので面白かった。
葡萄 美酒 夜光杯
欲飮 琵琶 馬上催
醉臥 沙場 君莫笑
古來 征戰 幾人囘
上記は有名な王翰の「涼州詞」と題する七言絶句である。酒泉周辺の河西地域で作られた民謡だといわれている。教科書にも載っている有名な漢詩であるが、作者の王翰は後にも先にもこの一作しかないというではないか。陳舜臣氏も「この詩を残すためにうまれてきたようなものです」と評している。
中国の内モンゴル自治区からモンゴルにかけて広がる「ゴビ砂漠」は語調も相俟って、印象深い地名である。しかし、土地の人は「戈壁灘(ゴビタン)」と呼んでおり、粒子の細かい砂丘上の土地を「沙漠」といい、石ころの多い砂礫の原を戈壁(ゴビ)といって使い分けている。ゴビは固有名詞ではなく、普通名詞だったのである。
また、ウイグル自治区の一角を占めるトルファンであるが、その市街地のほとんどが海抜0メートル以下の土地であり、最も低いところは海抜マイナス154メートルとなっている。夏と冬の寒暖差が大きい大陸性気候である。
序章以降は敦煌の仏像の話がメインで、読み飛ばしてしまった。
