土屋愛寿『世界の気象 総めぐり』(岩波ジュニア新書 2001)を読む。
どうしてもこの手の本は、参考文献の寄せ集めで、現実感のない解説ばかりになりがちである。しかし、著者の土屋さんは東京の公立の小・中学校に勤務し、日本地学教育学会の一員として海外巡検に参加し、以後、休暇を利用して世界各国を旅し続けている。そのため教科書レベルのケッペンの気候区分や砂漠での生活、暖流や寒流、貿易風など、基礎的な知識をおさらいしながら、実際の現地の様子が手に取るように分かるという「鬼に金棒」な内容であった。
ペルー海流の影響でガラパゴス諸島にペンギンが棲んでいるという話や、瀬戸内海沿岸で夏の小雨傾向の気候を利用して塩田が発達したという豆知識を得ることができた。他にも実際にウガンダやブルンジを訪れてアフリカ大地溝帯の聳り立つ壁に驚いたり、世界173カ国を実際に訪れる中で、日本の気候が過ごしにくいということを実感したりする話など興味深かった。