福井晴敏『平成関東大震災:いつか来るとは知っていたが今日来るとは思わなかった』(講談社文庫 2010)を読む。
東京都心で震度6強の大地震が起きた際の被害想定を元に、東京都庁から墨田区京島まで徒歩で歩いて帰る中年サラリーマンの姿を描く。刊行されたのが、東日本大震災での東京都心における帰宅パニック発生以前であるが、実際に体験したかのような詳細で臨場感あふれる状況描写に驚く。途中、地震波や建築基準法などの解説にかなりの紙幅が用いられるが、現場で途方に暮れる一人の中年男の混乱や不安、苛立ちにまで踏み込んだ純粋な小説でもあった。
『平成関東大震災』
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