本日の東京新聞朝刊に、新型コロナウイルスの感染拡大のため、東欧からの出稼ぎ労働者が減り、フランスやイタリアの農家の人手不足が深刻化しているとの記事が掲載されていた。
EUは域内の人の移動が自由化されているため、特にポーランドやルーマニアといった東欧の旧社会主義国の労働者が、賃金の高い西欧諸国で働く出稼ぎが常態化している。そのため、イギリスでは安価な労働力の流入によって自国民の失業率の上昇、社会保障費の負担増などの社会不安が高まり、EU離脱という道が選択された。
地理の「公式」といってもよいのだが、宗教や体制の如何を問わず、労働力の移動は、一人あたりのGNI(国民総所得÷人口)が低い国(地域)から高い国(地域)へ流れていく。統計や年度によって差はあるが、一人あたりのGNIは、日本が約40,000ドルである。ドイツが47,000ドル、フランス、イギリスが43,000ドル、イタリアが35,000ドルほどである。一方、ポーランドは15,000ドル、ルーマニアは12,000ドル、ブルガリアは9,000ドルとなっている。
現在、西バルカン諸国のセルビアや北マケドニア、アルバニアなどがEU加盟手続きを進めている。セルビアの一人あたりのGNIは7,000ドル、北マケドニアは6,000ドル、アルバニアは5,000ドルとなっている。セルビアなどはEU加盟を熱望しているとのことだが、西欧諸国が難色を示している。これらの国がEUに加盟したら、ポーランドやルーマニア同様、出稼ぎ労働者が急増するであろう。医者や技術者などの国外移住が増えると、移民を送り出す側の経済発展や医療制度の維持に支障を来たす事態となり、EU加盟は諸刃の剣となっている。