本日の東京新聞朝刊に,創立150年に合わせた靖国神社の参拝要請を宮内庁がお断りしたとの記事が出ていた。1978年にA級戦犯14人が合祀されて以来,天皇の参拝は途絶えている。記事によると,昭和天皇自身がA旧戦犯合祀に不快感を示しているとのこと。
1学期の授業で,2.26事件以降,日本がどのような経緯を経て敗戦,そして東京裁判に至ったのか,一貫してその流れで板書をまとめてきたつもりだ。
A級戦犯とは,たくさん人を殺した数で決まるのではなく,戦争を計画したり自ら主導したりした罪に問われた「指導者」のことである。東条英機ら28名が起訴され,25人が有罪となっている。決して「A級>B級>C級」という関係ではない。つまり,A級戦犯を裁くということは,日本が戦争に至った原因を白日の下に晒すという意味合いがある。逆に言うと,A級戦犯を肯定する形で祀るということは,日本が勝ち目の無いアジア太平洋戦争に突っ込んでいった歴史を隠蔽するということである。
私達が近代史を学ぶ意味は,日本だけでなく,戦争の20世紀と言われた第一次世界大戦,第二次世界大戦,その他の戦争に至った失敗の原因を理解し,これからの政治や経済,社会に生かすことである。
1985年の5月,数年前に鬼籍に入られたが,当時の西ドイツの大統領ワイツゼッカーは第2次世界大戦終了40周年演説の中で,「過去に目を閉ざす者は現在にも盲目になる」と訴え、ナチス・ドイツによる犯罪を「ドイツ人全員が負う責任」だと強調している。日本人にとっての過去は東京裁判であり,サンフランシスコ平和条約以降の日本の「戦後処理」である。
今日もテレビニュースを見ていて,1965年の「日韓基本条約」という言葉を何度も聞いた。本来はサンフランシスコ以降の流れ(冷戦や日米関係,東アジア経済)の中で理解しなくてはいけない日韓関係が,コメンテーターの勝手な感想で潤色されているのが気になった。2学期以降の授業を頑張らなくてはという気持ちになった。
さて,皆さんは皇室が靖国神社を参拝しない点についての賛否を,自分の言葉で丁寧に説明できますか。