佐藤伸行『ドナルド・トランプ:劇画化するアメリカと世界の悪夢』(文春新書 2016)を読む。
トランプ大統領が共和党の最終候補としてヒラリー・クリントンと争う直前に刊行された本で,トランプ大統領の系譜から,彼の人柄や経営センスを問う。週刊誌のような文体と内容で読みやすかった。民主党のカーターから共和党のレーガンへの政権交代と,オバマからトランプへの政権交代との類似が興味深かった。トランプ大統領の欠点をあげつらうのは簡単だが,ヒスパニックがどんどん増えていき,マイノリティー化していく白人の不安をうまく絡め取ったトランプの戦略は巧みである。
筆者は,トランプだけでなく,本来複雑な政治や経済をテレビ的に単純化し,政治判断に熟慮を重ねる真面目な政治家をばっさりと切り捨て,フェイクであろうが繰り返し攻撃し,自身のぶれない政治を演出するというレーガン以降の政治手法が世界中のリーダーに真似されている点を不安視している。