「改正入管法 根拠の正体」

本日の東京新聞朝刊の「こちら特報部」で「改正入管法 根拠の正体」と題したコラムが掲載されていた。

先日、外国人受け入れ拡大のため、採決強行で成立した改正入管難民法で、政府は「人手不足」を根拠として掲げてきた。しかし、7~9月の総務省の労働力調査によると、現在は働いていないが就労を希望する人は323万人。このうち働き盛りの25歳~54歳だけで175万人もいる。政府が「特定技能1号」として当初の5年間で受け入れる外国人の見込み総数の約34万5000人をはるかに上回る。
1990年代初めにバブル経済が崩壊した後、企業は新卒採用を抑制し、いわゆる「就職氷河期」が始まった。この時期に大学や高校を卒業した世代は正規雇用の職に就けず、アルバイトや派遣社員などの非正規雇用になった人も多い。新卒一括採用と終身雇用の慣行が長く続いた日本では中途採用で正社員になるのは難しかった。
一方、企業は長引く不況の中で賃金を抑えるため、非正規雇用を前提に経営を拡大させた。総務省の労働力調査によると、パートや派遣社員など非正規雇用の労働者は、2002年は就業者の29.4%だったが、その後は右肩上がりで増え、2017年には37.3%に上っている。いつ首を切られるか分からない質の悪い雇用の問題点は根深く、2008~09年の年末年始は、リーマン・ショックの余波で職を失った人たちを支援する「年越し派遣村」も運営された。
BNPパリパ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「普通は(業績好転で)人手の確保が必要になれば、企業は賃金を上げ、生産性を高めようと機械化や職場環境の見直しも考える。なのに、今ここで単純労働に割安で雇える外国人を受け入れたら、賃金も生産性も上がらない」と切り捨てる。

記事の中で、「正社員と非正規の格差がある中、もう一段下の低賃金の外国人という三層構造になる。結果的に低賃金が横行する」との指摘があった。こうした分断は経済だけでなく、政治や社会、文化の分断、そして極端な国家主義の萌芽ともなる危険なものである。自分は関係ないと済ますのではなく、自らの拠って立つ社会構造の問題として捉えていきたい。