『十三の墓標』

内田康夫『十三の墓標』(祥伝社 1992)を読む。
1987年に刊行された本に加筆・訂正を加えたものである。
名探偵浅見光彦は登場せず、警視庁の岡部警部の部下である坂口刑事が活躍する。全国各地に存在する和泉式部の墓や遺跡をモチーフに話が展開する歴史ミステリーである。内田作品初期の少し堅い雰囲気のある作品である。作品の展開と連動しながら、頭の中の地図がぐるぐると動いていった。1981年に実際に起きた余部鉄橋の列車転落事故が作品に絡んでおり、昭和という時代の歴史も合わせて感じることができた。最後はいつもどおり強引な展開で締めくくられてしまうが、ソアラで高速道路を疾走する浅見光彦シリーズとは異なり、鉄道の車窓からのんびりとした昭和の風景を一緒に味わえるのが一興である。