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『被爆のマリア』

田口ランディ『被爆のマリア』(文春文庫,2009)を読む。
先日の長崎の平和集会で、被爆のマリアを実際に目にしたので、手に取ってみた。
雑誌「文學界」(2005年8月号〜11月号)に掲載された中編4作品が収録されている。いずれも原爆にまつわる小説で、浦上天主堂に展示されている被爆のマリア像をモチーフにした表題作と、広島の被爆体験の語り部の女性や「原爆の火」を中心とした家族ドラマ、広島に流れる時間軸を超越した小説家など、発想に富んだ作品で飽きることがなかった。

広島を舞台にした小説は、原爆から60年経った現代の不安定さをテーマとしており、こうの史代さんの漫画『夕凪の街 桜の国』に雰囲気が似ており面白かった。「被爆の〜」は、被爆したマリア像が物語のアイテムとしてしか使われておらず、首を傾げてしまうような内容であった。