月別アーカイブ: 2024年1月

『ウェブがわかる本』

大向一輝『ウェブがわかる本』(岩波ジュニア新書 2007)を読む。
非常に読みやすい本であり、半身浴をしながら斜め読みでも全文を読むことができた。
著者は執筆当時国立情報学研究所助教と総合研究大学院大学助教を併任している情報学の専門家である。2019年からは東京大学大学院人文社会研究系准教授に就任している。

ヨーロッパ原子核研究機構のティム・バーナーズ=リーのハイパーテキストに始まり、イリノイ大学のマーク・アンドリーセンらによるモザイクブラウザ、スタンフォード大学生のデビット・ファイロとジェリ・ヤンが設立したヤフー、同じくスタンフォード大学のサー藝・ブリンとラリー・ペイジによって作られたグーグルに至るウェブの発展の歴史が分かりやすくまとめられている。専門的な解説は一切なく、ウェブの仕組みや活用法などが丁寧に説明されている。いかんせん15年前の本なので、ブログとSNSの役割の違いや、Wikipediaの紹介など、かなり知られた情報もあるが、それ以上に文章の上手さが印象に残った。

『アフリカ大陸から地球がわかる』

諏訪兼位『アフリカ大陸から地球がわかる』(岩波ジュニア新書 2003)を読む。
これぞ岩波ジュニア新書という、中身のある内容であった。名古屋大学で長年にわたって地球物理学を教えていた学者による本で、一流の専門家による分かりやすい文章で読み応えがあった。

アフリカ大陸は、面積約3,000万平方キロメートル、南北の長さ約8,000キロメートル、東西の幅約8,000キロメートルの大きな大陸です。大陸の南東に浮かぶマダガスカル島一つが、日本列島の2倍近い面積をもっています。緯度からいえば、アフリカ大陸の北端は、日本の東京とほぼ同じです。また、アフリカ大陸の南端は、オーストラリア大陸の南端とほぼ同じです。つまり、東京からオーストラリアの南端まで、太平洋を陸地で埋め尽くしたのが、アフリカ大陸です。

パンゲアとはギリシア語で「すべての大地」という意味です。

『日本人のための英語術』

ピーター・フランクル『日本人のための英語術』(岩波書店 2001)をパラパラと読む。
著者は、ハンガリー出身の数学者で、刊行当時早稲田大学の理工学部で英語(数学?)を教えていた。
英語を学ぶというよりも、英語を教える先生へのアドバイスといった内容である。発音や文法の完璧主義が学習を阻害するという点が印象に残った。会話でも英作文でも知っている簡単な言葉を繋げて、間違っても良いから継続することが大切だと述べる。

『地図の文化史』

海野一隆『地図の文化史』(八坂書房 1996)をパラパラと読む。
現存する世界最古の地図として知られる、カフカスのマイコプ遺跡から出土した銀製の壺の表面に描かれた紀元前3000年頃の地図に始まり、有名なバビロンの世界図やエラトステネスの世界図、プトレマイオスの世界図、マテオ・リッチの「坤輿万国全図」など、百科事典なみに紹介されている。

著者は1921年生まれで、第七高等学校造士館を経て、京都帝国大学文学部に進学し、大阪大学で人文地理学を担当していた学者である。地図一つ一つについての解説は詳しいが、いかにも辞典的な説明で、いまいち興味が沸かなかった。

『チャップリン』

江藤文夫『チャップリン』(岩波ジュニア新書 1995)をパラパラと読む。
著者は成蹊大学文学部で映像論や思想・文化論を講じた文学者である。岩波ジュニア新書なのに、ひたすらチャップリンの映画の作品論が展開されていて、取り付く島もないまま突き進んでしまっている。

ただ、チャップリンが1932年の5月14日に来日し、翌15日には当時の犬養毅首相の子息健が相撲見物に招待している。5.15事件はその相撲見物の最中に実行されている。当時犬養毅殺害の首謀者であった古賀海軍中尉の裁判記録では、チャップリンも殺害予定だったそうだ。合衆国の有名人であるチャップリンを殺すことで合衆国との戦争を引き起こせると信じたという証言が残されている。