日別アーカイブ: 2022年10月22日

『顔がたり』

石井政之『顔がたり:ユニークフェイスな人びとに流れる時間』(まどか出版 2004)を卒読する。
著者自身が、顔の右半分に大きな赤いアザを抱える血管腫の患者である。血管腫は新生児の1000人中約3人の割合で生まれるといわれ、1億2000万人の日本人の中で、約36万人が顔や体のどこかにアザを持っている計算である。

身体的な機能にほとんど問題がないため、障害者という括りからは外れる。しかし、著者はいじめや社会的差別の対象となっている事実から目を背けていない。また、教育や仕事以上に、恋愛の場面で大きな心理的ハンデとなっている現実にも触れている。根本的な治療法がなく、障害でも病気でもないので、当事者とその家族だけで苦しみを抱え続ける人が多い。

著者は現在、「ユニークフェイス研究所」を立ち上げ、全国の顔や身体にトラウマを抱えている人たちとの交流会を開催している。見た目以上に繊細な問題であり、著者の活動が広がることを祈念したい。

「昆虫食工場進化」

本日の東京新聞朝刊に昆虫食工場もITを活用し、飼育が自動化されているとの記事が掲載されていた。授業の中でも何度か取り上げているが、人間の筋肉や骨、皮を作る必須アミノ酸を多量に含む動物性タンパク質が世界では足りていない。良質なタンパク質は、牛肉や豚肉などの肉類、アジやサンマ、エビなどの魚介類、牛乳やチーズなどの乳製品、卵などに含まれるが、いずれもアフリカの内陸部では手に入りにくいものである。

そうした世界的なタンパク質不足の切り札が昆虫食だと言われている。コオロギには魚や肉以上に良質なたんぱく質が含まれている。さらに、食物繊維、銅、鉄、マグネシウム、マンガン、リン、セレン、亜鉛などの栄養素も豊富である。また、牛や豚は大量にトウモロコシや大豆などの穀物を消費するが、コオロギは餌が少なくてすみ、環境負荷も小さい。まさにSDGsの象徴といっても良い。

記事ではコオロギがスマート工場で効率良く生産されるとのこと。日本で定着し、世界に普及してほしい食文化と技術である。