石井政之『顔がたり:ユニークフェイスな人びとに流れる時間』(まどか出版 2004)を卒読する。
著者自身が、顔の右半分に大きな赤いアザを抱える血管腫の患者である。血管腫は新生児の1000人中約3人の割合で生まれるといわれ、1億2000万人の日本人の中で、約36万人が顔や体のどこかにアザを持っている計算である。
身体的な機能にほとんど問題がないため、障害者という括りからは外れる。しかし、著者はいじめや社会的差別の対象となっている事実から目を背けていない。また、教育や仕事以上に、恋愛の場面で大きな心理的ハンデとなっている現実にも触れている。根本的な治療法がなく、障害でも病気でもないので、当事者とその家族だけで苦しみを抱え続ける人が多い。
著者は現在、「ユニークフェイス研究所」を立ち上げ、全国の顔や身体にトラウマを抱えている人たちとの交流会を開催している。見た目以上に繊細な問題であり、著者の活動が広がることを祈念したい。