佐藤優『世界史の極意』(NHK出版新書 2015)を読む。
世界史の教材研究として手に取ってみた。繰り返される戦争を防ぐために、世界史をアナロジカルに学ぶことが大切だと述べる。特に近代に入って資本主義の発達とナショナリズム(国民国家)の形成、そして苛烈な競争社会からのアンチとしての宗教という3つのファクターで世界史を分析する。
印象に残った点を書き置いておきたい。大航海時代以降の商業の発展を取り込んだ帝国主義は、その正統性を喧伝するために、歴史や民族、宗教を利用する。そうした過程全般がナショナリズムである。
エトニとは何か。
アントニー・D・スミスの定義は〈エトニとは、共通の祖先・歴史・文化をもち、ある特定の領域との結びつきをもち、内部での連帯感をもつ、名前をもった人間集団である〉
(中略)たとえば日本の場合でも、日本的なエトニというのは、本居宣長によって「漢意(からごころ)に非ざるもの」という形で、『源氏物語』や平安時代のなかにあると読み込まれました。
しかし、平安時代の人々に、本居宣長が言ったような「漢意に非らざるもの」という意識があったかどうかはわかりません。おそらくなかったでしょう。
それでも、この本居宣長の読み込みは、明治期以降に読み直され、日本的エトニとして発見されていくわけです。
つまり、エトニがあるからネイションができるのではなく、ネイションができるからエトニが発見されるのです。