陳舜臣『インド三国志』(講談社文庫 1998)を読む。
1984年に刊行された本の文庫化である。
世界遺産で有名なタージ・マハルの建造者として有名なシャー・ジャハーンムガル帝国第5代皇帝の子のアウラングゼーブ帝の治世を中心に、ヒンドゥー教のマラーター勢力や、イスラム教シーア派諸国、欧州諸国との対立を描く。陳舜臣氏の言葉を借りれば、熱心なイスラム教スンニ派の信徒であったアウラングゼーブ帝が、宗教に不寛容な政策を取ったことが、ムガル帝国の滅亡のきっかけとなった。インドの国内の対立に乗じて進出したイギリスや、オランダ、フランスの動きも興味深かった。プラッシーの戦いやセポイの乱など、世界史の復習にもなった。敵の敵は見方という国際政治のルールが随所で垣間見えた。
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『白衣の謝肉祭』
山口香『白衣の謝肉祭』(廣済堂文庫 1996)を読む。
月刊紙「新風小説」に掲載された作品で、短編の読み切り小説集となっている。雑誌掲載の都合なのか、とことん男性に都合の良い展開だらけで、出会ってすぐに、女性の方が大胆に主人公の男性に惚れ込み、濡れ場のシーンに突入する内容が繰り返される。たまに読む分には良いが、同じような展開ばかりで飽きが来てしまった。
「ロヒンギャ密航 後を絶たず」
本日の東京新聞朝刊に、ミャンマー国内で難民化しているロヒンギャが取り上げられていた。こちらも授業が再開されたら、是非触れたいと思っている話題である。
ロヒンギャとは、仏教国のミャンマー国内で生活するイスラム教徒の少数民族である。長い間、ミャンマー国内で生活していたのだが、アウンサン・スーチーさんが国家顧問に就いてから、軍事力まで行使して弾圧が強化されている。ミャンマー政府はイスラム教国の隣国バングラデシュへ追い払おうとしたのだが、バングラデシュ側も経済的に受け入れることはできず、ミャンマーとバングラデシュの国境付近の難民キャンプでの足止めが続いている。
記事によると、同じくミャンマーの南側と国境を接しているマレーシアへの密航が相次いでいるという。言語や生活習慣の違いなどの溝は大きいが、マレーシアは経済的にも成功しており、マレーシアで共存する基盤が生まれることを期待する。
労働の場があるところ、金の落ちるところに人口が移動するのは経済の大原則である。ちなみに、一人当たりの名目GDPは以下の通りとなっている。
米国:62,869ドル
日本 :39304ドル
マレーシア:11,072ドル
バングラデシュ:1,749ドル
ミャンマー:1,300ドル
『ビブリア古書堂の事件手帖6』
「総人口減 過去最大」
本日の東京新聞朝刊に、少子化がもたらす自然減と、人口の偏在がもたらす社会減に関する記事が掲載されていた。地理学の世界では、社会や産業、農業など人間が関わる分野を人文地理学といい、人間が介在しない地形や気象などの分野を自然地理学といい、両者を総称して系統地理学という。また系統地理学を土台に世界の地形や気候、宗教、農業、産業などを学習する分野を地誌学という。
すでに日本に関しては、中学校で系統地理学と地誌学の両面からの学習を終えている。高校ではもう少し深く系統地理学を学んでいき、日本を除いた世界地誌を学んでいくことになる。人口は単なる数字の暗記ではなく、そこに社会の総体が象徴されており、産業の進展や経済が見えてくるものとなっている。
日本に住民票がある外国人が240万人を超える一方、日本人の人口はこの10数年の間、一貫して減り続けている。社会を支える生産年齢人口の減少分を外国人労働者が担っている状況が見えてくる。そうした外国人に対する公的支援の充実と、日本語を母語としない子どもたちが増えていく中で、教育の機会の確保が求められる。
この点はまた授業の中で触れていきたい。cf.夜間中学、定時制高校、ワラビスタン