諏訪緑『玄奘西域記』(小学館文庫 2000)の第1巻を読む。
唐代初期にシルクロードを経由してインドに向かい,仏教の教典を持ち帰って翻訳作業に従事し,『大唐西域記』を著した玄奘三蔵の活躍を脚色たっぷりに描く。
漫画ではあるが,歴史考証もしっかりとしており,なるほどと思うところが多々あった。唐代初期ということで中央アジアを支配していた突厥と唐の対立が背景として描かれる。その中で,羊の生育を計りながら遊牧民の生活と畑作を営む定住民の終わりなき対決の構造が説明されていた。また,玄奘が旅した630年はゾロアスター教の終焉の年にあたっており,ゾロアスター教が新興のイスラム教にとってかわられていくというのは興味深かった。いったいどういう理由があるのだろうか。
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『バリ島バリバリ』
Kuma*Kuma&よねやまゆうこ『バリ島バリバリ:女たちのムフフ楽園旅行記』(光文社 2000)をパラパラと読む。
イスラム教国家のインドネシアにありながら,ヒンドゥー教の信仰が根付き,バリ舞踊や影絵芝居,ガムラン音楽など独自の文化が息づくバリ島の旅行記である。イラスト満載のゆる〜い感じでバリの不可思議な魅力が語られる。
『民族世界地図』
浅井信雄『民族世界地図』(新潮文庫 1997)を読む。
著者は「民族」というのものは,単純に言語や宗教,血縁,文化などによって定義できないものであり,他民族との摩擦や衝突によって意識される観念的な後知恵であると述べる。そうした政治状況や経済状況によって容易に揺れ動く不定義なナショナリズムを頼りに,主に冷戦崩壊以降の89年から90年代前半にかけての世界各地で勃発した民族紛争が取り上げている。
ユーゴスラヴィアに始まり,アゼルバイジャンとアルメニアの対立やジョージアにおける南オセチア自治州の独立問題,ロシア内のカレリア共和国の独立,クルド人やジプシー,バスク人の運動など,アラブやスラブの定義などがわかりやすくまとめられている。また,ルーマニアの西側にあるモルドバ共和國や,アフリカ・エチオピアから独立したエリトリアなど,恥ずかしながら初めて存在を知った国もあった。
著者は既に鬼籍に入られているが,特派記者として世界を駆け巡った体験に根ざして,わかりやすく中立的に民族について紐解く語り口は大変心地よい。
『世界一の男を探す旅』
渡辺ひろ乃『世界一の男を探す旅』(幻冬社文庫 2012)を読む。
著者が旅した世界40カ国の中から21カ国を挙げ,それぞれの国の性愛事情が紹介されている。
特にカリブ海沿岸に位置するドミニカ共和国,ハイチ,キューバ,米領プエルトリコ,ベリーズ,ホンジュラスといった国でのセックス体験やベッドでの会話,男性ペニス比較は,それぞれの国情も垣間見えて面白かった。
それにしても,世界各国で結婚詐欺まがいの行為や激しい性行為を繰り返す,著者の渡辺さんはいったい如何なる人物なのか。
『土屋の[古文]:ナンセンス編』
土屋博映『土屋の[古文]:ナンセンス編』(大和書房 1985)をパラパラと読み返す。
授業の参考にしようとしていたのだが,ほとんど読まないまま職場の引き出しの奥に眠っていた本である。
ラジオに出演した時の小咄や,下ネタを交えた語呂合わせによる文法の覚え方などを交えて,代表的な作品の読み方がまとめられている。「入試問題で空欄があったら,係助詞『こそ』を入れておけ」とか,「何形と問われたら,連体形と答えておけ」といったあるあるテクニックなども紹介されているが,当時の重箱の隅をつつくような入試問題がありありとよみがえってくる。