『玄奘西域記』

諏訪緑『玄奘西域記』(小学館文庫 2000)の第1巻を読む。
唐代初期にシルクロードを経由してインドに向かい,仏教の教典を持ち帰って翻訳作業に従事し,『大唐西域記』を著した玄奘三蔵の活躍を脚色たっぷりに描く。
漫画ではあるが,歴史考証もしっかりとしており,なるほどと思うところが多々あった。唐代初期ということで中央アジアを支配していた突厥と唐の対立が背景として描かれる。その中で,羊の生育を計りながら遊牧民の生活と畑作を営む定住民の終わりなき対決の構造が説明されていた。また,玄奘が旅した630年はゾロアスター教の終焉の年にあたっており,ゾロアスター教が新興のイスラム教にとってかわられていくというのは興味深かった。いったいどういう理由があるのだろうか。