西村賢太『暗渠の宿』(新潮文庫 2006)を読む。
野間文芸新人賞を受賞した表題作のほか、デビュー作『けがれなき酒のへど』が併録されている。
風俗女性に騙された体験や同棲する女性といざこざなど、著者自身の経歴が色濃く滲み出ており、大正・昭和初期のプロレタリア私小説を彷彿とさせる。
『暗渠〜』では、何度も登場する「慊りない」という語が印象的であった。
日別アーカイブ: 2017年12月28日
『現代社会学科への誘い』
京都文教大学現代社会学科編『現代社会学科への誘い』(文理閣 2010)をパラパラと読む。
京都文教大学人文学部現代社会学科の新入生全員に配布される「共通教材」となっている。経済学、経営学、法学、国際政治学の導入に関する内容で、おそらくは学科に関わる先生方全員が分担して執筆しているのであろう。編集者自ら「内容・形式そして使用方法も自由な『寄せ鍋』風の教材が誕生した」と述べているように、残念ながら一貫性のない単なるレジュメの寄せ集めに過ぎず、あまりに雑駁過ぎて読むのが辛かった。
古利根川サイクリング
『日本人とユダヤ人』
イザヤ・ベンダサン『日本人とユダヤ人』(角川文庫 1971)をパラパラと読む。
随分と古い本であるが、日本人独特な宗教観や時間感覚、安全や動物、奴隷に対する特別な意識など、日本の政治や社会、文化について、史実や他国の例などを挙げながら丁寧に説明している。
最後はイスラエル建国の正当性やキリスト教の解釈によって歪められたユダヤ教の正しい教えについての項で締めくくられる。作者は日本生まれの日本育ちのユダヤ人で、日本の古典や歴史にも造詣が深く、戦前には米軍による日本の調査にも加わり、戦後何度も日本を訪れているという、ぶっ飛んだ経歴の人物である。
イザヤ・ベンダサンなる人物は一体どういう素性の持ち主なんだとWikipediaで調べたところ、どうやら本物のユダヤ人ではなく、山本七平なる保守派の日本人評論家のペンネームのようだ。