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防衛強化 急ぐエストニア

本日の東京新聞朝刊にエストニアの防衛事情に関する話が掲載されていた。
ロシアによるウクライナのクリミア半島併合後に、「ロシアの脅威」が増大していったということだ。しかし、クリミア半島とエストニアは2000キロ近くも離れている。また、スェーデンも7年ぶりに徴兵制を復活させることを決めている。ロシアがバルト海周辺で軍用機による活動を活性化させているためだという。大国ロシアの軍事力がもたらす世界への影響は確実に増大している。少し注目して追っていきたい。

 トランプ米大統領が北大西洋条約機構(NATO)加盟各国の国防費増加を求める中、旧ソ連バルト三国の一つ、エストニアの取り組みが注目を集めている。独仏などの大国を尻目に、国防費はNATOが目標とする国内総生産(GDP)2%以上を達成。周辺の大国の脅威にさらされてきた歴史から民間防衛隊の活動もさかんで、各国に「国を守る」意味を問い掛ける。 (エストニア・タリンで、栗田晃、写真も)

 二月中旬、タリン郊外の演習場で、民間防衛隊「カイツェリート」の雪上訓練が行われた。「バラバラになるな。一斉に行動するんだ」。迷彩服を着た参加者は小銃を手に軍から派遣された講師の指示を聞いた。
 この日のテーマは森林での戦闘。「地雷を見つけたら、後続の仲間にも分かるよう印を置け」などと指導はかなり実戦的だ。
 参加者の動機はさまざまだ。中学教師のケン・ヘベイキさん(30)は「リーダーシップを学ぶために来た」、三歳の娘を持つ主婦のバーバラさん(26)は「何か新しい体験をしたいと思ったから」と話す。きっかけは趣味の延長線上でも、「いざとなれば自分たちで国を守る覚悟はある」と口をそろえる。
 二〇一四年のロシアによるウクライナ・クリミア半島併合後、隣国ロシアの脅威は現実味を帯びている。現在の登録隊員は二万五千人。一五年の新入隊員数は、例年の倍となる千二百人に増加した。
 人口百三十万人のエストニアで、平時の兵力は計六千人(半数は徴兵)。補完する存在として民間防衛隊の役割は大きい。職業軍人でなくともNATO軍としてイラクやアフガニスタンなどへの海外派遣もある。
 NATOは二四年までに全二十八加盟国の国防費をGDP比2%以上とすることを目指すが、現在達成しているのは米英に加え、ギリシャ、ポーランド、そしてエストニアの五カ国だけだ。有事に他国の支援を頼むためにも、ツァフクナ国防相は「自分たちで自分を守る用意を示すことも重要だ。その例がカイツェリートだ」と話す。

 <エストニア> バルト海に面し、中世は貿易で発展。デンマーク、スウェーデンなどによる支配をへて、18世紀にはロシアの勢力下に。第1次大戦後、独立を果たすが、第2次大戦時にソ連に併合された。1991年にソ連から独立。2004年、欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)に加盟した。近年はIT技術の発達でも知られる。

『国家の謀略』『知の武装』

佐藤優『国家の謀略』(小学舘 2007)、佐藤優×手嶋龍一『知の武装:救国インテリジェンス』(新潮社 2013)の2冊をパラパラと読む。
どちらも佐藤優氏の述べる「インテリジェンス」をキーワードに、米露欧を中心とした国際政治の駆け引きの舞台裏の暴露話が中心となっている。なんだかリアル版『ゴルゴ13』のような内容で興味が湧かなかった。
ただ一点、佐藤氏が外交やインテリジュンスの基礎知識を身につける基本書として、高校の政治経済の参考書を挙げていたのは興味深かった。

以下、佐藤氏オススメの参考書
早稲田大学政治経済学部教授松本保美編著『理解しやすい政治・経済 新課程版』(文英堂 2014)

『河上肇評論集』

杉原四郎編『河上肇評論集』(岩波文庫 1987)を読み始めた。
河上肇氏は1902年生まれの経済学者である。『資本論』の翻訳や、ベストセラーとなった『貧乏物語』の著者としても有名で、読売新聞社を経て京都大学の教授となってからは、マルクス主義の立場を漸次はっきりとさせていき、『改造』や『労働農民新聞』などで論陣を張るオピニオンリーダーとなった人物である。しかし、50歳を前に大学を辞して後、共産党に入党し、地下運動に入り、4年間獄中で暮らした華々しい経歴の持ち主である。
どの文章も、今現在の社会、政治、経済、労働問題の核心をついており、著者の視点の鋭さに驚きを隠せない。
その中でも一番印象に残った章をを引用してみたい。論語に代表的な漢文の訓読調の繰り返しのリズムが耳に心地よい。

 経済社会の理想は経済社会それ自身の滅亡にあること、以上述ぶるが如し。しからば敢て問う、吾人は如何にしてこの理想を実現するを得べき乎。曰く他なし。ただ労働を遊戯化するにあるのみ。然りただ労働を遊戯化するにあるのみなれど、この事言うは易くして行うは実に難し。今ま吾人はこれが実現の手段を索めて大要二種の方策を得たり。一を労働時間の短縮となし、ニを労働の種類の選択となす。請う、まず労働時間の短縮について論ぜん。

 思うに、如何なる種類の刺激といえども、もしその刺激にして或る程度以上に強絡んか、吾人は必ず一定の苦痛を感ずるに至ルものなり。例えば音楽を聴くに、その音声、耳を距ること甚だ遠ければ、吾人はこれに対して固より何らの快感を覚えずといえども、さらばとて耳のすぐ傍にて奏せらるるにては、如何に美妙の音楽といえども、われらはその騒々しさに耐え得ざるべし。演劇を見るにも、近からず遠からずという或る一点あるものにて、或る程度を越して近寄りては、美しく見えし俳優の顔にも、白粉の汗に剥げたるを見るに至るべし。寒き時、外より帰り来りて暖炉にあたらば、最初の中は甚だ快けれど、度を過ぐれば、頭痛を感ずるに至るべく、暑き時、涼風の吹くは誰も心地よしと賞むれど、それにもまた程度あることにて、温度或る程度以上に降らば、また寒しというに至らん。如何に古来稀なる名画なりとも、見ること久しければついに飽くの時あるべく、終日坐してこれに対せよといわるれば何人も苦痛を感ぜざるを得ざらん。またたとえばここに酒ありとせんに一杯また一杯、杯を重ぬるに従うて暫の間は興次第に加わるといえども、それも度を越さば、酒の味次第に減じて全く飽満の極に達し、それより以上酒を勧めらるるはかえって苦痛を不快とするに至るべし。

 これを要するに、距離の関係よりいうも、時間の関係よりいうも、将た分量の関係よりいうも、一定の刺激にして或る以上に強からんか、吾人は必ず一定の苦痛を感ずるに至るものなり。音楽を聴き、演劇を観る、皆な人の楽しとする所なり。寒き時、暖炉にあたり、暑き時、涼風に吹カルル、皆な人の快しとする所なり。名画を賞し美酒を味わう、また人の欲する所なり。しかもこれらのこと皆な一定の程度ありて、これが刺激その度を超えて強絡んか、吾人はついに一定の苦痛不快を感ずるを免れざるなり。しからば、かの長時間の労働に服する余儀なくせられつつある多数の労働者が、常にその労働の負担に苦しむ、何ぞ怪しむに足らん。

 人生の苦痛は過度の労働を強いらるるより生ず。もしその程度を適度に軽減せんか、今日の苦役、半ばは化して遊戯とならん。知るべし、労働を遊戯化するの一策は、その時間の短縮にあることを。

 人生一日も水なかるべからず、しかも水の供給にして過度ならんか、人畜家財を流出してその害をいうべからず。人間また一日も静坐することあたわず。必ず手を挙げ足を投ずることをなす。ただその一挙手一投足に止まらざるが故に、人生に苦痛あり。

『レディになるための魅力講座』

山谷えり子『レディになるための魅力講座』(日本実業出版社 1986)を読む。
主に20代の女性を対象としており、男性の気を引くための振る舞いや会話、化粧方法などの恋愛ハウツー本である。80年代後半当時、揶揄されることの多かったマニュアル本の類である。女性という生き物は、自分を売るためにここまで細かい部分に気を使うのかと、およそ男性には真似できない芸当であると勉強になった。
著者の山谷さんは、現在、自民党選出の国会議員であり、北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会で委員長を務める。はたして、著者の勧める”男性ナンパ術”が国会のセンセイを相手にいかされているのだろうか。

エキスポセンター

 

久しぶりにゆっくりとした休みだったので、家族を連れて、筑波宇宙センターの見学施設と、科学万博つくば’85の日本政府の施設であったつくばエキスポセンターに出かけた。

 

筑波エキスポセンターで今も変わらずにお客さんを迎えていた”コスモ星丸”のオブジェに感激も一入であった。
どうでもいい話だが、小学生の頃、コスモ星丸の姿が『Dr.スランプ』の漫画に出てくるニコちゃん大王にそっくりだという話をしたものだ。
確か小学校6年生の時に、3回、4回行ったのではないだろうか。閉幕1週間前の8月か9月に友達と行った記憶が残っている。当時は科学技術の進展に単純に憧れを抱いていたので、万博の描く未来の生活が眩しく感じたものだ。

 

 

エキスポセンター内の展示の中に、東京工業大学が製作した4本足のロボットが展示されていた。米軍が開発を進めている4足歩行ロボットの初期型にそっくりであった。本日の東京新聞朝刊一面に、大学の軍事研究に際して各大学の対応が分かれているという記事が載っていた。人間生活の向上に寄与する科学技術が戦争に繋がっている、その境目がもはや素人には見えなくなっている。だからこそ大学の研究者の実際的な倫理観が問われることになるのだ。館内を歩きながら、ふとそんなことを考えた。