池田弥三郎(1914~1982)『光源氏の一生』(講談社現代新書 1964)を読む。
来週から授業で「若紫」に入る予定なので、教材研究の一助として手に取ってみた。読みやすい文章で、一気に読んでしまった。いつまでも『源氏』の人物関係図が整理できない自分にとって、大変分かりやすくあらすじがまとめられており、千載一遇のベストな一冊となった。
タイトルにある通り、光源氏の視点で物語が展開されており、光源氏自身の男としてのビルドゥングスロマンという側面で話が再構成されている。また、著者は、光源氏自身も含む皇族の流れを汲む「王氏」と、頭の中将(内大臣)などその他の氏族の「他氏」との政治的な軋轢を強調し、玉鬘の後見や夕霧と雲井の雁の恋、柏木と女三の宮との不義など一連の処遇を、源氏の政略的な判断と見ている。
私が手にしたのは1994年発行の第54刷であったが、現在でも講談社の方では増刷を続けているようである。古典好きな受験生に是非薦めたい本なので、時流に負けず今後も発行を続けてほしい一冊である。