越谷のレイクタウンという新しい街にできたイオンショッピングモールに出かけた。流石に「東洋最大級」と言われるだけあって端から端までワンフロアーを歩くだけでいい運動になった。子どもが遊べるコーナーも多数あり、家族連れには都合がよい。ただ、郊外の大型ショッピングモールには多少食指気味である。店舗が多いだけで、何か買おうという気持ちにはなれなかった。
月別アーカイブ: 2008年10月
『石川啄木集−下−』
古谷綱武編『石川啄木集−下−』(新潮文庫 1950)を読む。啄木は歌ばかり作っている人かと思っていたが、熱烈な文章を書いていることにびっくりした。彼がまだ26歳(といっても、亡くなる1年前なのだが)の時に、友人に宛てた手紙の一節を引用してみたい。
そうして僕は必ず現在の社会組織経済組織を破壊しなければならぬと信じている、これは僕の空論ではなくて、過去数年間の実生活から得た結論である。僕は他日僕の所信の上に立って多少の活動をしたいと思う。僕は長い間自分を社会主義者と呼ぶことを躊躇していたが、今ではもう躊躇しない。無論社会主義は最後の理想ではない、人類の社会的理想の結局は無政府主義の外にない(君、日本人はこの主義の何たるか知らずに唯その名を恐れている、僕はクロポトキンの著書を読んでビックリしたが、これほど大きい、深い、そして確実にしてかつ必要な哲学は外にない、無政府主義は決して暴力主義でない、今度の大逆事件は政府の圧迫結果だ、(中略))然し無政府主義はどこまでも最後の理想だ、実際家は先ず社会主義者、もしくは国家社会主義者でなくてはならぬ、僕は僕の全身の熱心を今この問題に傾けている、「安楽を要求するは人間の権利である」僕は今の一切の旧思想、旧制度に不満足だ、
『夕凪の街桜の国』
先日、こうの史代『夕凪の街桜の国』(双葉社 2004)という広島の原爆をテーマとした漫画を読んだ。
ヒロシマといっても『はだしのゲン』のような被爆直後の悲惨な体験ではない。現在の東京で何不自由なく暮らす一般の市民が主人公が、ふとしたことで親や祖父母の生き様を追ううちに、現在の東京では歴史の1ページになってしまった戦争や原爆という問題にぶつかる。しかし、その問題とは、原爆について考えれば考えるほど、僅か1世代2世代前の親や祖父母の戦争体験がすっかり風化してしまった(させてきた)「戦後」という問題である。
本作では社会の表面からすっかり消えてしまった戦争や原爆が、人間の血の中に息づいているということを描き出す。子どもや孫の血の中にどこまでも先祖の戦争体験が流れていくという難しい内容である。しかし、軽いタッチで描かれており、高校生に是非読ませたい作品であった。
『石川啄木集−上−』
ワーキングプアやネットカフェ難民などの貧困の問題が巷間語られるこのご時世、小林多喜二の『蟹工船』がブームになっているらしい。私が学生時代に卒論でプロレタリア文学を研究していた時には想像もしなかったことである。そこでブームの先端を行く私としては、小林多喜二の次にくる作家は誰かと考えた。そこで思いついたのが石川啄木である。
「はたらけど はたらけど 猶わが生活(くらし)楽にならざり ぢつと手をみる」という歌に代表されるように、ズバリ貧困をテーマとした「現代版貧窮問答歌」の歌人というイメージが私の中にあった。しかし、
そこで、古谷綱武『石川啄木集−上−』(新潮文庫 1950)を読んでみた。貧乏歌人というイメージは脆くも崩れていった。むしろ青春歌人とでも
特に次の歌が気に入った。
あたらしき心をもとめて
名も知らぬ
街など今日もさまよひ来ぬ
この歌の末は「来ぬ」と完了形で終わっている。ここは今日もさまよってしまったという完了で終わるべき歌である。現在形でも過去形でも駄目である。現代日本語には、
最近、身も心もぼろぼろで精神的にあっぷあっぷなので、文章としてまとめることができない。なので、ここで終了〜〜。
本日の東京新聞朝刊
本日の東京新聞朝刊に「おやっ」とするようなコラムが載っていた。堤未果さんというジャーナリストの「本音コラム」と題した文章である。途中少し読みにくい箇所があり、誤字?(「国境を超え」)という部分もあるが、非常に視点が良いので引用してみたい。
世界に波及する金融危機は本当にアメリカ型モデルの終焉と言えるだろうか。米国ではCIAなどの国家諜報活動の民営化が拡大している。
1千億ドルの民間軍事業界と並ぶ5百億ドルの巨大市場「諜・産複合体」だ。5月、世界最大規模の投資ファンドのカーライルグループは「テロとの戦い」の名の下に国民の情報監視・収集を行なった大手諜報企業ブーズ・アレン社の政府部門を買収した。諜報企業を次々に買収するカーライルは世界中のファンドに魅力的な投資先だ。住宅バブルで破綻したサブプライムローンと違い、見えない敵への恐怖が需要を生み続けるからだ。
だが、民営化された諜報業務では、拷問合法国への対象者移送の速さとその効果が重視され、スパイ活動でのメールや電話の監視・分析は利益の対象になる。アブグレイブ刑務所で囚人たちに拷問を行い起訴された尋問派遣社員も、会社から優良社員とみなされた。初めに民営化があり、司法はその後からついてくる。
7月に大統領が署名した盗聴に関する外国情報監視法改正案は、米国情報機関の令状なし盗聴対象を全世界の通信にまで拡大した。通信技術が国境を超え、監視される当事者との傍観者の間の境界線もその存在を消した。携帯で有名なウィルコムもカーライル傘下にある今、人権という共通項で連携し、身を守る必要がある。
戦争、監視体制の民営化は映画やアニメなどで数年前から指摘されてきたことであるが、『ミッション・インポッシブル』のような情報コントロールが現実化しているのかと思うと薄ら寒い。ジャーナリストの堤未果さんであるが、ネットで調べたところ、今春川田龍平さんと結婚し、現在も米国と東京を行き来して執筆や講演活動を行なっている才媛だそうだ。近いうちに選挙にでも出て来そうな人物である。