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『コドモ界の人』

石坂啓『コドモ界の人』(朝日新聞社 1996)を読む。
朝日新聞に連載されたコラムで、彼女の息子リクオくんが2才から4才に至るまでの奮闘記である。子どもの仕草を通して大人の世界を論じてみたり、子どもの立ち振舞いから大人の付き合いを批判したりするなど、育児全般を社会的に浮かび上がらせようとしている。「早く!」と急かすのではなく、「あと10分!」と余裕を与えて納得をさせるなど、子どもへのうまいアプローチなども紹介されていて、親の立場で読むと学ぶところも多かった。
また、子どものかくれんぼ好きについてのコメントはなるほどと考えさせるものであった。

(子どもが大人の見ている前でシーツに隠れて遊びに興じる話から)
そこにいるのがバレている状態で「隠れる」というのは、いったいどういう事を楽しんでいるのだろうか。それにしても本気でドキドキしながら、本気で姿を消しているつもりのようだ。知ってるゾなんてこちらがワッと脅したりしようものなら、「ダメーッ!!」とヒスを起こす。
どうもこの遊びの原点というのは「いないいないバァ」にあったような気がする。たいていの赤んぼは親が顔を見せたり隠したりするだけで、ケラケラ笑ったり不安になったりする。じゃあこの路線の先は何かというと、遊びの定番の「かくれんぼ」だろう。小学生ともなればかなり高度に、友だちどうしでルールをつくって隠れたりみつけたりして遊ぶ。しかしそれもある時点までだ。大人が本気で「かくれんぼ」して遊んでいるというのは、あまりきかない。
そう考えてみるとどうやらこれは、だんだん親の庇護のもとから離れていくための訓練のように思えてくる。親もとでの安全圏の中で、行きつもどりつをくり返しながら、やがては本当に大人から離れて一人でやっていくときのために、ドキドキを経験しながら遊んでいるのかもしれない。