土屋哲『アフリカのこころ:奴隷・植民地・アパルトヘイト』(岩波ジュニア新書 1989)を読む。
ルワンダに関する映画を観たので、アフリカの歴史を復習したいと思い手に取ってみた。大航海時代以降、アフリカがヨーロッパによって恣意的に分割され、収奪されてきた歴史が分かりやすく書かれている。著者は最後に日本人がアフリカの未来を考える枠組みとして次の言葉でまとめている。差別が蔓延るする社会全般を見渡す視点としても記憶するに値する文章である。
ところで、世間には先進国とか発展途上国とか後進国といった国際的な用語がある。そして日本は先進国の仲間に入っている。私たちがいま心すべきは、アフリカをふくめてアジアその他の第三世界のひとびとと接するとき、先進国という位置からうしろ向きにアフリカ見るようなことは絶対に避けなければならない。そういう姿勢では、アフリカの人々の信頼をかちとることはできないし、折角の援助も実を結ばないであろう。アフリカがいま立っている位置に私たちの身を置いて、前向きに未来に向けてともに歩むという心構えが大切なのだ。この点アフリカの人びとは、奴隷制と植民地支配という二重苦にとことん苦しんできただけに、人の心の機微を見通す力は実にすごい。私たちがアフリカの人びととつきあう場合、〈アフリカのこころ〉と固く結ばれていなくてはならないのである。