日別アーカイブ: 2005年11月18日

『企業人の読書日記』

田淵節也ほか『企業人の読書日記』(図書出版社 1993)を読む。
1989年から93年にかけて雑誌「選択」 に掲載された企業トップの読書雑感がまとめられいてる。野村証券相談役田淵節也、松下電器相談役谷井昭雄、富士ゼロックス会長小林陽太郎、東日本旅客鉄道最高顧問山下勇、資生堂社長福原義春、三菱商事会長諸橋晋六(いずれも当時の役職名)の6名の企業人がビジネス書のみならず、小説や紀行文などの幅広いジャンルに亙る本についてのを披露している。89年から91年にかけてのバブル絶頂期にはJ・フォローズ著『日本封じ込め』や西尾幹二『日本の不安』など、世界に冠たる日本経済の行方について論じた威勢の良い著書の紹介が多いのだが、バブルがはじけた93年になると、相田みつを著『にんげんだもの』や司馬遼太郎『最後の将軍』、堀田力『再びの生きがい』など、我が身を振り返る内省的な本に傾倒していく変遷が面白かった。
このなかで特に、富士ゼロックス会長の小林陽太郎氏の読書日記が一番興味深かった。東京か地方か、平和か戦争か、権力か民主主義か、といった議論の尽きない微妙な問題について、どちらかに依拠しすぎず、常に「中庸」の視点を持ち、行動することを強調する。そうした彼の深い洞察力は、彼のみが未だに現役で富士ゼロックス社の会長に就いていることと無関係ではあるまい。