佐山一郎『「私立」の仕事』(筑摩書房 1991)を読む。
運命共同体である会社組織や平等を強いられる学校社会を脱して、「自分らしく」生きようとする人々へのインタビューで構成されている。当時立ち上がったばかりのJ-WAVEでミュージックナビゲーターを務めるジョン・カビラ氏や、「桃太郎電鉄」を制作したさくまあきら氏、12年間サラリーマン生活との二足のわらじをはき続けた「GONTITI」のTiTi松村などの当時30代の「冒険者」たちが、自身の労働観や業界に対する思いを語っている。
著者は、そうした転職・転機をうまく活かして自分の地位を築いた人たちを「私立」と名付けて、次のように定義している。
産業的価値を画一的に生活様式へ組み込むことに批評的な社会の訪れを予感するにやぶさかでない、来るべき明日の見極めへのより強い意志が「私立」にはあるように考えられます。クールな情熱と内省の匂いがします。