月別アーカイブ: 2004年11月

『自閉症からのメッセージ』

 熊谷高幸『自閉症からのメッセージ』(講談社現代新書 1993)を読む。
 自閉症についての様々な症例が紹介されており、その特徴についてかなり踏み込んだ理解が出来た。特に自閉症では言語能力について著しい齟齬があり、会話が難しいが、その大きな原因については熊谷氏は、てにをはの助詞の誤りが多い点を指摘する。そのために「車が犬に轢かれた」「熊で魚を釣る」といったような文を作ってしまう。言葉一つ一つに対する理解はあるのだが、言葉と言葉を適切に結びつけることを苦手とするようだ。生前中野重治氏は日本語は助詞があるから文が生きてくる。いくら名詞や動詞を検閲で塗られてしまったとしても、文意が通じてしまう膠着語である日本語の持つ力を礼賛していた。その逆に自閉症児は「てにをは」の理解が困難であるため、いくら名詞や動詞を覚えてもスムーズな会話は期待できない。
 タイトルに「自閉症からのメッセージ」とあるように、自閉症の様々な症例を知るたびに、いかに「我々」健常人の認識能力が精妙なものであり、「私」という意識の下に複雑かつ整然と統合されたものであるかが思い知らされる。

雨模様

 本日の朝刊で先月の月間降雨量が報道された。先月10月の東京の雨量は観測史上最高の780ミリだったそうだ。1月から9月までの9ヶ月の雨量は782ミリなので、ほぼ9ヶ月分がひと月に降った計算だ。本当に雨の多い月であった。気持ちよく晴れたという日が思い出せない。天候のせいもあってか、体調があまりすぐれない日が続く。疲れがたまっている。。。 仏教大学のレポートの締め切りが近づいている。果たしてあと4日で書き終わるのだろうか。

『新障害児教育入門』

 茂木俊彦『新障害児教育入門』(旬報社 1995)を要点だけ読む。
 通常学級での障害児を受け入れるための条件整備について障害種別に留意点をまとめている。いたずらに何でもノーマライゼーションの錦の下で統合教育を進めるべきではなく、障害の状態に応じて、盲・聾・養護学校などもいままで以上の拡充を計り、子ども一人一人の学習権を保障すべきだと主張する。著者は最後に心理学者ジャン・ピアジェの世界人権宣言の「教育を受ける権利」について解説した論文を引用し締めくくりとしている。良い言葉なので紹介したい。

 教育を受ける権利とは、学校に通学する権利だけではない。それは、教育が個性の完全な開花をめざすかぎり、能動的な理性と生きた道徳的意識をつくりあげるのに必要なもの全部を学校のなかに見出す権利である。