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『教育学』

中野光・平原春好『教育学』(有斐閣Sシリーズ 1997)を読む。
平原氏は私の学生時代の「教育法規」の担当教授であったが、ほとんど授業には出席しなかったので、残念ながら授業内容は覚えていない。しかし、折に触れて、教育基本法はすべての教育関係法に優先する最高法規的な性格を有しており、教基法の精神を守り、具体化させていくことが大切だという熱いコメントは記憶の片隅に残っている。
内容的には、コメニウスからルソー、ペスタロッチ、デューイまでのヨーロッパ近代教育史、そして、谷本富から沢柳政太郎、及川平治、木下竹次あたりの大正自由教育運動の簡単な流れを概観しながら、指導者中心の知識注入主義から児童生徒中心の問題解決型学習という指導法の発展を分かりやすくその時代の中で位置づけている。
教育学というと、哲学と倫理学と文科省行政を適当に組み合わせただけの「インチキ」くさい学問かと思っていたが、平原氏は次のように教育学を位置づける。

 コメニウスのおいてもそうであったように、教育学は教育現実を直視し、批判し、警鐘をうち鳴らす学であると同時に、どんなきびしい現実の中にも、未来への希望を見出し、改革への可能性をさぐり、展望を開く使命をになっている学問である。