月別アーカイブ: 2004年1月

『中国軍事力』

平松茂雄『中国軍事力』(文春新書1999)を読む。
現代中国関係の新書をここしばらく何冊か読んできたが、政治、経済、軍事など範囲を拡げて数冊読む事で中国の抱えるダイナミズムの概要がおぼろげながら理解出来るようになった。毛沢東やとう小平、江沢民といった中共の政治的指導者個人を分析しても中国は見えて来ない。朝鮮戦争後、常に台湾、ロシア、米国(日本)の3国との軍事的緊張の中で、政治や経済の方針が立てられてきた歴史を緻密に分析していくことで、今後の東アジアにおける平和を占うことが出来るであろう。

これまでの日本の反戦運動は共産党や社民党、労働組合、学生団体といった一定「左翼」勢力を中心に取り組まれてきたため、共産主義国家の軍事力は資本に対抗するための必要悪だという認識がなされてきた。1963年には、米英ソ3国が「部分的核実験停止条約」を結んだが、これに対して中国共産党は「超大国の核独占だ」とし、「アメリカの核は強盗の武器だが、社会主義国の核は防衛の武器だ」と反対した。この中国共産党の方針に追随した日本共産党は、党内で異論の声をあげる中野重治や佐田稲子らを除名し、日本の反核運動に分裂をもたらしたことは銘記しておくべき問題だ。

中国には今もって明らかに、中国の同化力のおよぶ範囲こそが世界であり、1840年のアヘン戦争前の清最盛期の領土が本来の中国であるといった「失地回復主義」ともいうべき考え方が強い。それ故に中国の「戦略的境界」は台湾を越えて、東シナ海、南シナ海にまで拡大の歩を止めることはない。そうした中国の膨張の流れを分析していくにあたり、その背景にある中国とロシアの軍事緊密化の流れに常に批判の目を向けていくことがまず必要であろう。

イラク報告会

告知です。


第10回「NO War!」ぴーす・うぉーく IN かすかべは佐藤好美さんのイラク報告会です。

1月10日(土)午後1時半から、春日部市視聴覚センターで行う予定です。詳細はチラシをごらんください。
また1月11日(日)午後1時11分、イラクに対する自衛隊の派遣に反対の意思表示を全国一斉に行います。春日部では、春日部駅東口で、この一斉行動に参加します。同じ思いの方は午後1時にお集まりください。

詳細はこちらへ。

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『世界ケンカ旅』

大山倍達『世界ケンカ旅』(徳間文庫1985)を読む。
極真空手創設の頃のマス大山の海外での冒険潭である。誤解を覚悟で言えば、「いんちきくさい良書」といったところだろう。ナイフやこん棒を手にした相手に果敢に戦ったという話がもっともらしく書かれているが、恐らくは脚色もかなりあるのだろう。しかし事実であるかどうかは問題ではなく、大山倍達自身に魅力を感じればよいのである。彼自身空手を通じた平和の達成という夢あることを述べている。勝つか負けるかという勝負を超えて、青年に生きていく希望と夢を与える格闘技が求められる。年末も紅白歌合戦の裏で格闘技の番組が中継されたが、地下プロレス的なショー以上のものではなかった。

現在の「格闘技」と一般に呼ばれるジャンルは極真や極真周辺の空手やキックボクシングの団体と、プロレス団体が集まって形成されている。その仲介役としてUWFやUインタ−、リングス、パンクラス、グレイシーなど様々な試みの場が生まれては消えていった。

バスツアー

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本日、春日部発のバスツアーに出掛けて来た。案の定中年以上の高齢者が多く、相対的にまだ若い私は少し浮いた感じであった。しかし自分で運転せず、勝手に観光地を回ってくれるというのは楽なものである。途中河口湖付近の忍野八海という富士山の雪解け水が湧水するところへ寄った。地下の溶岩で濾過されているということで数メートル先は見通すことの出来る大変きれいな池であった。諺に「水清ければ魚住まず」というが、悠々と鯉が泳いでいた。

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『破線のマリス』

野沢尚『破線のマリス』(講談社1997)を読む。
テレビのニュース番組の制作現場を舞台にした作品である。作者野沢氏はテレビ番組を数多く手がけており、小説ではあるが、ニュース番組の映像が、いかに一介の編集者の意向で主観的に作られるものであるかをつくづく実感した。映像を切り貼りし、音楽とスーパーの組み合わせ次第でいくらでもニュース映像をつくる事が出来るのだ。オウム真理教報道以降特に顕著だが、最近の北朝鮮報道など視聴者の関心や恐怖をいたずらに喚起するニュース番組の過当競争は、ニュース素材を伝えることよりも、他局よりもきわどいニュース映像を作ることに注力がいってしまう。これはもう止められない流れであり、正常な判断をするためには、テレビを消すしかないであろう。