月別アーカイブ: 2003年4月

『当節定時制高校事情』

佐々木賢『当節定時制高校事情』(有斐閣新書 1987)を読む。
「スクールウォーズ」に描かれた80年代前半の学校が荒れていた時代の雰囲気をよく象徴したエピソードがたくさん紹介されている。妊娠中絶や暴走族、シンナーやリンチに万引き、カツアゲ、さぼりなど生徒指導の項目オンパレードである。しかし定時制高校の教師である著者の視線は暖かい。それら全てを自己表現の現れと肯定的に受け止めている。そして返す刀で管理教育、教育の貧困を切る。論調としては「ありがち」な教育批判に過ぎないが、著者の迷いが素直に述べられており好感が持てる。そうしたラディカルな理想論と現実とのギャップに悩む著者のありようは次の引用によく表されている。

(あまりに出来ない生徒を前にして、他教科の試験中に解答をこっそり板書して説明したことについて)おそらくこれはカンニングのせいだろう。テスト最中に答えを教えるのは立派なカンニングだ。この時教師は「ものを教えて評価する」教師ではなく、カンニングの共犯者となっていたのである。中国の文化大革命の頃「カンニングは正しい」とされたことがある。互いに教え合う協力の精神が高く評価されたのだ。カンニングは犯罪なのか、意外に難しい問題なのだが……。

『京都史跡見学』

旅行中、村井康彦『京都史跡見学』(岩波ジュニア新書 1982)を読んでいた。
なぜ京都へ行くことを「上洛」というのか、どうして室町時代が京都に花咲いたのか、福原遷都の失敗など京都を巡るおおまかな歴史について理解できた。京都旅行に行く際、ちょっとした旅行のスパイスとなる代物である。

京都・奈良へ

2泊3日で京都・奈良へ旅行に行ってきた。
奈良飛鳥の万葉集を巡る旅に出たいというのが当初の目的であったが、京都観光旅行がメインになってしまった。天候にも恵まれず、肌寒い旅路となった。しかし2日目は奇跡的に晴れて、自転車にて高松塚や石舞台、天の香具山や、また吉野にも赴くことが出来た。「大和には 群山ありと とりよろふ 天の香具山 登り立ち 国見をすれば 国原は 煙立ち立つ 海原は かまめ立ち立つ うまし国そ 秋津島 大和の国は」と舒明天皇の歌にも登場する大和三山の一つである天の香具山の中腹まで自転車で登った。中腹からでも畝傍山と耳成山がきれいに見えた。飛鳥が山の神に守られた土地であることが実感出来た。

その後、夕刻も迫っていたが、近鉄吉野線の終点吉野駅からケーブルカーを乗り継いで吉野山へ向かった。古来桜の名所として和歌に詠み込まれている吉野であったが、桜の開花時期に嫌われ、つぼみを鑑賞するだけであった。「咲いたらすごいんだろうな」と、万葉集を飛び越えて、藤原定家の「有心」を体現するように、想像上のイメージを楽しむしかなかった。

自転車より天の香具山を望む

桜のほとんどない吉野山の様子

哲学の道にて桜を愛でる

龍安寺の模様

金峯山寺の門前の賑わい