地理」カテゴリーアーカイブ

「原発の攻撃対処『国の検討課題」

本日の東京新聞朝刊に、国内の13道県に立地する原発に対する他国からの武力攻撃への不安についての記事が掲載されていた。
私は日本に原発は不要であり、即時廃炉すべきだと考える。1つ目の理由は地震や津波である。東日本大震災では、マグニチュード9.0の規模の揺れが原因で、格納容器が致命的な損傷を受けている。続く津波で外部電源を失い、炉心を冷やすことができず水蒸気爆発を起こしている。そして今現在も放射能に汚染された水が1日に130トンも排出されている。

2つ目の理由は原発の使用済み核燃料の最終処分地が決まっていないことである。10万年もの間安全に保管すべきゴミの処分先が決まっていないのに、原発の再稼働がおかしいことは小学生でも分かる理屈である。現在青森県六ヶ所村に原発の使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し、もう一度原発の燃料とする再処理工場の建設が始まっている。といっても1993年に着工が始まり、1997年には完成予定だったが、2022年の現在も未だ完成の見通しすら立っていない。つい先日26回目の完成延期を決めたばかりである。

3つ目の理由は記事にもある安全保障の点である。日本海を挟んで北朝鮮や中国、ロシアといった国があるにも関わらず、ミサイル1つ被弾しただけで日本国土の半分が汚染される危険な原発を維持する必要があるのかということだ。こちらも日本政府は六ヶ所村と同じ過ちを犯している。1年生の授業で北朝鮮のミサイルについて触れた。領海の外の排他的経済水域内に落ちたので、日本政府は批判をするだけで何もできないという説明をしました。

では北朝鮮のミサイルが日本の領土に落ちると計算された場合、日本はどう動くのでしょうか。日本近海には米国からバカ高い値段で買わされたイージス艦という軍艦が配置されています。イージス艦とは高度なレーダーとミサイル迎撃システムを備えた最強の軍艦ともいわれています。他国からのミサイルが日本の国土に落ちる前にイージス艦から対空ミサイルが発射されることになっている。また、イージス艦がたまたま不在のこともあるので、PAC-3と呼ばれる地上の地対空ミサイルシステムが、日本各地の自衛隊基地に配備されている。

そんなロボットアニメのようなミサイルを撃ち落とすミサイルで、日本の国土や国民、原発が守れるのか、いや守れるはずがない。(反語表現)。。。。

しかし、ウクライナでは、NATOから供給された地対空ミサイルでかなりの数のロシアのミサイルを撃ち落としているとのこと。。。。

採点疲れのため、ここで終了。

「中国、新たなガス田試掘か」

本日の東京新聞朝刊に、日中の排他的経済水域の中間線に隣接する海域で、中国が天然ガスを採掘するための構造物を設置しているとの記事が掲載されていた。授業の復習になるが、排他的経済水域とは海岸線から200海里まで範囲で、航行や上空の飛行は自由に行えるが、域内の海洋の漁業資源や海底の鉱産資源については沿岸国の権益が認められており、他国が自由に利用することができないという国連条約に基づく決まりである。但し200海里(約370km)が隣接国と重複する場合は沿岸からの中間線で範囲が決定される。

記事にある地図と教科書のEEZの地図を見比べれば、韓国と中国との中間線がはっきりとわかると思う。今回の構造物の建設はあまりに露骨である。「日本は認めることができない」と断言した岸田総理がどのような行動に移るのか着目しておきたい。選択肢の1つに加えておくことだ。課題を共有しつつ後世に判断を委ねる「鄧小平路線」を継承したい。

「ロシアがフィンランド送電停止」

本日の東京新聞朝刊に、ロシアがフィンランドへの電力と天然ガスの供給を停止すると発表したとの記事が掲載されていました。1学期の一番最初の授業の中で、今回のウクライナ戦争の背景にある、ロシアの天然ガスに依存する欧州のエネルギー政策について話しました。地球温暖化を食い止めるパリ協定が施行される中で、欧州はエネルギーとして石炭を利用することを止め、二酸化炭素の排出が少ない天然ガスの割合を増やしています。下掲しましたが、フィンランドもNorthern Lightsパイプラインを経由して、しっかりとロシアから天然ガスを輸入しています。

記事では触れていませんが、フィンランドはロシアからの電力や天然ガスの供給が止まった際は、いったいどのようなエネルギー政策の転換をはかるのでしょうか。記事では隣国のスェーデンからの輸入を増やすとしていますが、スウェーデンは森林や鉄鉱石、水力こそ恵まれていますが、原油も天然ガスもほとんど産出しません。

ここで自然地理学の知識を活用してみたいと思います。フィンランドはユーラシアプレートのほぼ中央に位置し、10億年以上前からほぼ変わらない、極めて安定した岩盤の上に位置しています。地理用語ではこうした地形を「安定陸塊」と言います。安定陸塊ではプレートの辺縁の歪みの影響を受けないため、全くと言って良いほど地震が発生しません。

そのため、フィンランドでは地震に弱い原子力発電所が元気に稼働しており、国内電力の10%を担っています。地政学的にフィンランドは、原子力発電にますます頼っていくことでしょう。

「難民認定過去最多74人」

本日の東京新聞夕刊に、昨年2021年の日本の難民認定が74人だったとの記事が掲載されていた。
出入国在留管理庁のホームページで確認したところ、2021年の難民認定申請の処理数は6,150人であり、前年に比べて711人(約13%)増加している。その内65人が認定されているので、約100倍の狭き門となっている。また、不服申立ての処理数は7,411人であり、前年に比べて936人(約14%) 増加している。その内、不服申立てに「理由あり」とされた者(認定者)が9人で、 「理由なし」とされた者(不認定者)が6,732人となっている。主な国籍はスリランカ、カンボジア、ネパール、パキスタン、バングラデシュとなっており、人口増加と中国インフラが忍び寄る南アジア出身の人たちが目立つ。

記事をパッと読む限りでは、難民認定に寛容になったと受け取れるが、元々の難民認定申請そのものが増えており、認定率はさほど改善されていない。ただし、主にミャンマー人だが、難民とは認定しなかったものの人道的な配慮を理由に在留を認めた者が580人となったのは評価して良い数字である。

難民認定の話は、特に高校生世代にとって身近な話であり、授業中のディベートのテーマとしたいと考えている。もし高校卒業後に付き合う彼氏・彼女が、労働ビザで来日した外国人だったらという流れを考えている。

「米、ASEAN支援強化」

本日の東京新聞朝刊より。
地理総合の授業で1秒でさらっと触れた東南アジア諸国連合(ASEAN)に関する記事である。
ASEANはもともと1967年に東南アジアの中心であるシンガポール(ハブ空港で扱いました)を中心に、周辺のインドネシア、マレーシア、フィリピン、タイの5カ国で発足した地域共同体である。現在ではさらに周縁のベトナム、カンボジア、ラオス、ブルネイ、ミャンマーの5カ国が参加し、東ティモールを除く東南アジア10カ国が参加している。世界第4位の2億7000万人の人口を抱えるインドネシアが含まれているので、ASEAN全体で日本の5倍の6億5000万人の人口を数え、中国、インドに次ぐ巨大市場となっている。

授業では触れることができなかったが、マレー半島のマラッカ海峡が含まれており、地政学的には重要な位置を占めている地域でもある。ここ数年、米中対立がエスカレートする中で、中国だけでなく米国もASEANへの擦り寄りを示している。南シナ海の不安定な情勢と絡めて、経済だけでなく、米英豪、日米豪印の軍事同盟や国際政治といった点を意識すると、教科書の太文字ゴシックの用語もキラキラと輝いて見えますよ。