投稿者「heavysnow」のアーカイブ

『アイドル政治家症候群』

矢幡洋『アイドル政治家症候群:慎太郎、真紀子、康夫、純一郎に惹かれる心理』(中公新書ラクレ 2003)を読む。
テオドア・ミロンの人格障害理論に依拠し、日本で人気を集める政治家の心理と、その人気の仕組みの分析を試みる。日本人は、共同体内部においては気配り上手で、万事にきちんとし、忍耐力のある苦労人という調整的で同調的なパーソナリティを持った人間を理想としてきた。しかし、抑うつ的な雰囲気が社会全体を覆うにつれて、共同体の外の集団に対しては独断的で破壊的な強烈な自分意識を持った人間を希求するようになる。そうした時代の雰囲気に小泉総理や、田中真紀子議員、石原、田中知事がうまく乗っかったと著者は評する。著者の分析は政治評論の立場ではなく、あくまで人格分析に基づくので、発想が新鮮である。例えば石原都知事については、権力の中枢を浮遊しながら、あくまで彼の行動判断の基準に「反社会性」が貫かれていると述べる。一方で、鈴木宗男議員は熱血漢を売りにしながらも、あくまで自説の論理の整合性で持って相手をねじ伏せようとする攻撃性を有すると著者は結論付ける。本人に対する取材はなく、本人のマスコミでの発言や著書からの分析であり、牽強付会な箇所も多いが暇つぶしには良いだろう。

『姑獲鳥の夏』

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京極夏彦原作・実相寺昭雄監督『姑獲鳥(うぶめ)の夏』(2005 ヘラルド)を観に行った。
昭和20年代の戦後の混乱期の人間模様がテーマの作品で、時代の雰囲気がよく表現されていた。しかし、話しの展開はテレビドラマの域を越えるものではなく、映画館で観るほどのものではない。昨年放映していたフジテレビのドラマ『アットホーム・ダッド』に出演していたメンバーが何人も出ていて、変な先入観を持ってしまった。
雨上がり決死隊の宮迫は完全に俳優業が板についたようで、演技もうまかった。しかし、作中の久遠寺「涼子」と篠原「涼子」は何かしらの関係があったのだろうか。

世界陸上を見ながら

今日でやっとここ数ヶ月の寝食もままならないほどの忙しさからしばしの間解放された。特に7月上旬以降、気持ちの休まる日がなく余裕のない日々を過ごしていた。今週はゆっくり休んで、また来週以降の忙しさに備えよう。

今日は夜に少しTBSテレビの世界陸上を観た。実際の競技のシーンよりも、昔のビデオや練習風景などの前振りが長いのには閉口した。また、K−1やPRIDEの影響だろうか、やたら選手に紹介のキャッチフレーズが入るのが気になる。ちなみにTBSテレビのホームページを検索したらわざわざ日本の全選手と海外有力選手百数十名にキャッチコピーを冠している。中には首をかしげたくなるようなものまである。あまりのセンスの悪さに笑ってしまうものまである。お盆で暇があったら一読してみると、お盆開けの話のネタになるかもしれない。早速ホームページから一部引用してみた。

最速伝説の継承者       ジャスティン・ガトリン(アメリカ)
草原の黄金狩人        エリウド・キプチョゲ(エチオピア)
スカンジナビアの跳躍貴公子  クリスチャン・オルソン(スウェーデン)
ウガンダのジャンヌダルク   ドカス・インジクル(ウガンダ)
室伏に忍び寄るヒットマン   イワン・ティホン(ベラルーシ)
室伏を迎え撃つヘルシンキの星 オリペッカ・カルヤライネン(フィンランド)
ローマの最高傑作       ステファノ・バルディーニ(イタリア)
ドミニカンスーパーマン    フェリックス・サンチェス(ドミニカ)
かっとびパリジェンヌ     ユニウス・バルベール(フランス)
弾丸ママはパリジェンヌ    クリスティーン・アーロン(フランス)

ガトリンの「最強伝説の継承者」くらいならまだ許せるが、「室伏に忍び寄るヒットマン」だの、「室伏を迎え撃つヘルシンキの星」というネーミングを選手当人は許諾しているのだろうか。TBSの良識を疑うところである。「ローマの最高傑作」「ドミニカンスーパーマン」「弾丸ママはパリジェンヌ」に至っては明らかに考案者のネタ切れである。露悪なペットネームをいたずらに付けることは、逆に変な先入観を持って選手を見ることになってしまい、選手に失礼な気がして仕方がない。

『天下御免の向こう見ず』

爆笑問題『天下御免の向こう見ず』(二見書房 1997)を読む。
1995年9月より『TV Bros』に連載された太田氏のエッセーがまとめられている。当時30歳であった彼がオウム事件や薬害エイズなどの事件について率直な感想を述べている。そのエッセーの中で、彼は「もし自分だったら〜」「マスコミはこのように言うが〜」と物事を相対化する視点に立って、努めてフラットに社会を見つめようとしている。彼の芸風の原点が垣間見える。

『教養としての大学受験国語』

ここ10日ほどかけて成城大学文芸学部教授石原千秋『教養としての大学受験国語』(ちくま新書 2000)を読む。
現代思想の視点で文学テクストの分析を試みている著者が大学の入試問題を私見交えて解説を加えている。東大や筑波大を始め、近畿大や専修大などの大学で出題された大学の入試問題が実際に掲載されており、全て解きながら読み進めていったのでかなりの時間を使った。しかし、近代、身体、大衆、情報、言語など、最近の難関と呼ばれる大学で頻出のテーマを、大変分かりやすく解説していて現代思想の入門書としても最適な一冊であった。
石原氏は最近早大教育学部に移ったそうであるが、今後教育学部の入試問題の現代文は石原氏の手に委ねられることが十分に予想される。早大教育を受験するものにとっては必須の参考書となろう。