『「特別支援教育」で学校はどうなる』

越野和之・青木道忠『「特別支援教育」で学校はどうなる』(クリエイツかもがわ 2004)を仏教大学のスクーリングの授業の参考書として読む。
2003年3月に文科省より出された「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」に基づいて明らかにされた「特別支援教育」構想の批判的な検討を意図して編まれたものである。この「特別支援教育」とはこれまでの「特殊教育」に加えて、「約6%程度の割合で通常の学級に在籍している可能性」がある学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、高機能自閉症などの子どもたちを新たに個別サポートしながら、通常学級での統合教育を目指すという壮大なプロジェクトである。
この「報告」は一見するところ「近年のノーマライゼーションの進展」や「一人ひとりの教育的ニーズに応じた教育」と、これまでの「平等、画一、排除」の論理に支えられた公教育体制を打破するような画期的なものになっている。しかしよく検討してみると、この「報告」では、障害児が安心して頼ることのできたこれまでの特殊諸学校や特殊学級を予算の都合で停止し、障害者に対して基盤整備の整っていない段階でいたずらに自立や自己責任を強請し、結果として「競争主義的な教育」の最底辺に特別支援教育置くというものになってしまう。

しかし、片方でこれまで50年続いてきた現行の就学前検診における一律な分離教育の限界も指摘されている。今後、この文科省主導の「特別支援教育」の流れに片足だけ乗りながら、人間の尊厳を大切にする障害児教育の具体的な実践を現場レベルで積み重ねて乗り越えていくことのできる人材が求められている。

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