『職業としての地下アイドル』

姫乃たま『職業としての地下アイドル』(朝日新書 2017)を読む。
一般的に、近寄りがたい存在で、極めてマニアックでディープな世界という印象が強い地下アイドルについて、一応の学術的な分析を加えた内容である。「地下アイドル」というと、地下のステージを燻っているイメージが強いが、今をときめく橋本環奈さんも福岡県のローカルアイドルユニット出身である。「奇跡の1枚」と称された画像がインターネットで瞬く間に広がっていったシンデレラストーリーである。

著者の分析によると、地下アイドルの世界はアイドルとファンが持ちつ持たれつの相互依存の関係が成立している。地下アイドルになる女の子はいじめ体験を持っている人も少なくなく、観客から声援をもらったり、物販に会いに来てもらったりすることで承認要求を満たす。またファンの側にもアイドルの子たちに認知されて、レスをもらいたい欲求があり、応援することが認知に繋がるため、自然と互いを満たし合う関係になる。

また、地下アイドルは必ずしも容姿に恵まれた人が成功するわけではない。法政大学越智啓太教授によると、外見的魅力がつりあっていないカップルが早く別れることが統計的に明らかにされている。自分と釣り合いのとれた容姿の人と付き合うのが合理的な選択である。地下アイドルとファンの関係はお互いに求め合っているので、容姿以外の点が評価されやすいという側面がある。