『88ヶ国ふたり乗り自転車旅』

宇都宮一成・宇都宮トモ子『88ヶ国ふたり乗り自転車旅:中近東・アフリカ・アジア・ふたたび南米篇』(幻冬舎文庫 2017)を読む。
1997年6月から2007年11月までの10年半をかけてタンデム自転車で世界88ヶ国・105,805kmを走破した旅日記である。二人乗り自転車の快適さや心地よさは伝わってきたが,現地の人たちとささいな事でトラブルになったり,日本円を持ちながらもケチくさい行動が目に余ったりと,読後感はあまり気持ちの良いものではなかった。

「おっ!」と思っても止まれないバスの旅や,スピードが速すぎて見落とすことの多い車・モーターバイクの旅に比べて,自転車の旅は自由と発見に満ちている。今見えているものが,風,匂い,光とともに記憶に沁み込んでゆく。それがおもしろい。だから僕たちは自転車で旅に出た。そして今も走り続けている。