河本敏浩『名ばかり大学生:日本型教育制度の終焉』(光文社新書 2009)を読む。
東進ハイスクールで現代文・小論文講師として教壇に立ちながら、全国学力研究会理事長を務める著者が、「ゆとり教育」や学力低下の現状、受験競争と校内暴力や援助交際との因果関係、絶望的なまでの学力格差などについて語る。特に「ゆとり教育」と「学力低下」を短絡的に絡めて、高校までの教育に責任を押し付けようとする大学教員に対する舌鋒は鋭い。
最後に著者は、「学力低下」に対する方策として、高校卒業時に義務教育修了資格試験の実施を提案している。確かに分数の計算ができないとか、基本的な国語や英語の知識がないと指摘される大学生の基礎学力低下を考えると効果的であろう。
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『大学の淘汰が始まった!』
平山一城『大学の淘汰が始まった!』(宝島新書 2013)を読む。
産経新聞編集委員を務める著者が、産経新聞のウェブサイト「イザ!」に掲載されたブログ記事がまとめられたものである。
旧来の教養学部の解体と「リベラルアーツ」の隆盛、「国際」と名がつく学部の中身の検証、学生や保護者、受験生、就職先などの「ステークスホルダー」の需要を満たすの取り組み、政府や文科省の高等教育政策など、2013年上半期当時の大学にまつわる一話完結の四方山話が続く。読みやすい内容だったので、1時間半ほどで一気に読んだ。
著者自身は「哲学」の意義や「古典」の力を重んじているのだが、そうした大学教育の土台が議論されないままに進んでいく大学経営の流れに一石を投じている。
子どもとサイクリング
『ツール・ド・フランス 君が教えてくれた夏』
Naco『ツール・ド・フランス 君が教えてくれた夏』(岩波書店 2009)を読む。
自転車の機材やレースの駆け引き技術といった男性的な視点ではなく、選手の素の姿やフランス旅行などの女性的視点からツール・ド・フランスを描く。読みやすい文章で、軽やかにツールの魅力が伝わってきた。
著者公式ホームページ Mas.ciclismo
『O・ヘンリー・ミステリー傑作選』
小鷹信光編・訳『O・ヘンリー・ミステリー傑作選』(河出文庫 1984)を手に取ってみた。
ここしばらく肉体的には健康なのだが、精神的には落ち着かず、活字を読む余裕がない。本書も訳者あとがきだけ読んだ。
「賢者たちの贈りもの」や「最後の一葉」などの短編小説で知られるO・ヘンリーは、1862年にNorth Carolina州に生まれ、公金横領容疑で逮捕され、刑務所内からプロ作家になったという異色の経歴の持ち主である。その後、New Yorkで華々しい売れっ子作家生活を送るも、家族離散やアルコール中毒となり、寂しい最期を迎えている。
O・ヘンリーという名はペンネームなのだが、ファーストネームが何を指すのか分かっていないそうだ。
しっかりとした気分転換が必要なのかもしれない。